『児童サービス論』のレポートの続きです。
第2課題
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【第1設題】 子どもにとって読書はなぜ必要か、できるだけ自分の体験をふまえながら
論じなさい。
【はじめに】
子どもと読書について考えるとき、読書によって得られる表面的な効果・利点といった視点で語られることが多いのは残念なことである。こどもに本の世界を手渡す者として、彼らの成長にとって読書がなぜ必要なのか、おとなになってからの読書と本質的に何が違うのかを考えたい。
【本文】
おとなが本を手にとる時、娯楽や楽しみのためであったり、教養を深める、情報を求めるなど、たとえ無意識にせよ目的が具体的であり自分の要求に合った本を探すはずである。一方子どもにとっての読書とは、わくわくしながら未知の世界を楽しむことではないだろうか。赤ちゃん絵本を乳児が眺める時や幼児が耳からお話を聴く時、そして自分で文字を読めるようになってからも、絵本・物語・知識の本に関わらず、それらを通して新しいものに出会い自分の世界を広げることを楽しんでいるのだと感じる。子どもの成長は心の中の地図を日々更新することだと考えれば、未知の世界を覗く扉であることが彼らにとっての本の役割である。
次に言葉の獲得という点で考えたい。幼児期に耳からの読書を重ねる中で、子ども達は『ことば』が本の世界を楽しむのに必要な道具であることを知る。そして日常生活では出会う機会の少ない独特の響きを持った音韻やよく練られた言い回しに触れることで、豊かな言葉を身につける。言葉と上手につき合えるようになるにつれて物事を順序よく理解したり、目では見えない事象や他者の気持ちを想像することができるようになる。子どもの日常を見ていると、言語能力の高い子どもは総じて集団内での振る舞い方や学習能力に優れていると感じることが多く、読書を通じた豊かな言葉の獲得が「生きる力」を育む基礎になっているのである。
さて、幼児期の読書を通じて未知の世界の扉を開くことを知り言葉という道具を身につけた子どもは、ある程度の年齢になると本の世界を自由に歩き回れるようになる。物語の中で現実の世界では起こりえないような出来事に遭遇し、物語の主人公とともに現実世界とは別の自分を生きることはその後の人生に少なからぬ影響を与えるかもしれない。我々にとって様々な体験をし多様な価値観に触れることは心豊かな人生のために大切なことであるが、実生活では限りがある。地理的・経済的に制限のある子どもにとってはなおのこと本を通じて得られる体験が重要なのだと考える。
子ども時代にたっぷりと読書の楽しみに浸った経験は、おとなになって困難にぶつかったときに本がそれを乗り越える助けになることを思い出させてくれるはずである。
子どもにとって読書の大切さとは、本が生涯にわたって多くの価値あるものを与えてくれる存在だと人生の早い時期に知ることと、先入観なしに新しい世界を味わうという子どもならではの経験を得ることにあるのではないだろうか。
【おわりに】
子どもに読書を勧めようとするとき、私がいつもぶつかるのが「子どもにとってなぜ読書が大切か」ということであった。自分の中で自然に育っていた「読書はよきものである」という感覚は言葉にしようとすると何か違うものになってしまい、はっきりとした答えを得られずにいたためである。今回このテーマについて考える中で、年代に関わらず読書を通して得られることと子ども時代の読書でしか獲得できないものがクリアになり、赤ちゃんからティーンエイジャーまであらゆる世代の子どもに本の世界を手渡す重要性を一層深く認識することができたと感じている。
【講評】評価:B
こちらも上記と同様ですが、文献の引用はご自身の意見を裏付けるように引用できているとよりよいです。
(講評に興味のある方は、【講評】の下の数行をマウスでドラッグしてハイライトさせて下さい。)
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