返却された『図書館文化史』レポートの続きです。
書物の歴史は盛りだくさんで大きな流れをずらずらと書くだけで終わってしまっていました。
考察の浅い部分をピシリと指摘されています(泣)。
第2課題
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【第2設題】
紙登場以前の記録メディアの変遷と書物の形態変化について説明しなさい。
【はじめに】
紙が発明されるはるか昔から、人々は多様な素材を媒体として情報を記録しきた。記録メディアと書物形態の歴史を知ることで「記録された知識の集積場所」としての図書館の成り立ちを理解したい。
【本文】
絵や文字を用いて記録を残す行為は、紀元前3500年頃には既に世界各地で行われており、文明の発達とともに知恵や知識を保存し後世に残そうとする工夫が生まれた。それらの情報をひとまとまりの書物として整理・保管する必要性が高まると、書物の形は1枚の板や葉から巻物へ、さらには冊子体へとメディアの素材と協同的に変遷した。紙以前の代表的な記録メディアの特徴と、それが書物形態に与えた影響を以下にまとめた。
1.甲骨・青銅・石板:古代中国(B.C.16~11)では甲骨や青銅器に占いや記念の記録を刻んだ。また身近な材料である石板は洋の東西を問わず現代に至るまで広く使われている。これらの素材は保存性は高いが彫る手間がかかり重量も大きいため大量の記録保管するには適さない。
2.粘土板・蝋板:粘土板は粘り気のある土に水を加え捏ね伸ばした半乾き状態の板に先端の尖った筆で文字を記して乾燥または焼成したものである。B.C.3000年頃の古代メソポタミアの遺跡では文書を記録した数万枚の粘土板が発掘されている。粘土板はひとまとまりに綴られることはなく棚に積み上げて保管していたようである。その後B.C.7世紀頃のアッシュルバニバル図書館では、粘土板の他に木版の凹みに蝋を注ぎ固めた蝋板を使用した文書の存在が蒐集記録に記されている。蝋板は複数枚をつなぎ合わせた折り本の形態で使うこともできた。
3. 竹簡・木簡・貝多羅・パピルス:東洋では、竹や木を薄く細長い短冊状に加工した竹簡・木簡や、ヤシ科の植物の葉を乾燥させ紐で中央を束ねた貝多羅が使われた。古代中国では竹簡・木簡を紐ですだれ状に綴り巻子本とした。また西洋ではナイル川流域に自生するパピルス草の茎を切り開いて縦横に重ね圧縮したパピルスが古代エジプトで生まれた。薄く柔軟性があり、糊でつなぎ合わせた巻子本の形態で利用できた。パピルスは周辺諸国にも輸出されB.C.3500年頃からB.C.1000年頃までの長期間使われた。これら植物を材料としたメディアは軽量で経済的であったため大量の書物が作られるようになったが、巻子本は収納に多くのスペースを必要とした。また読むには両手が塞がることや、必要な情報へのアクセスには広げたり巻き戻しの手間もかかることから、後に登場する冊子体に比べ、使い勝手のよい形態ではなかった。
4.獣皮・羊皮紙:動物の皮に絵や文字を記すことは古くから行われていたが、B.C.2世紀頃には洗練された皮メディアとしての羊皮紙が小アジアのベルガモンで生まれた。山羊や羊の皮を薄く張り伸ばし滑らかに磨いた羊皮紙は、パピルスと異なり両面に文字を書き込め丈夫で柔らかいのが特徴で、折り曲げた複数枚を糸で綴じ合わせ、木板の表紙を付けた冊子体の書物を生んだ。巻子本に比べ大量の情報をコンパクトに記録・保管でき検索性に優れた冊子体の登場は書物形態の大転換となり、紙と印刷が登場した後も現代に至るまでこの形態が使われ続けている。
【おわりに】
時代を超えて残ってきた記録メディアに共通するのは、経済性も含めた入手の容易さと長期保存性であることが理解できた。今日紙での保存がスペースに限界を生じてきていることとデジタル情報が急増していることから、紙に代わる保存性の高い新たな記録メディアの問題は大きな課題である。情報を保存し後世に引き継ぐために、新たな記録メディアと保存形態についての知識について広く学び、新しい技術の動向にも注意を払いたい。
以上
【講評】評価:B
合格ですが、記録メディア=書写材料の変遷が書物の形態に与えた影響についてはさらに考察しましょう。なぜその材料がその時代、その地域で書写材料として利用されたのかも考えてみましょう。地中海世界と東アジアは独自に発展しましたし、製紙技術・印刷技術は中国から伝播しました。書写材料と書物の形態もなぜその形なのか?各地域に置けるその必然性を考える必要があります。その結果は、書物の排架の仕方にも影響するでしょう。なお記録は極めて日常的な行為です。そのためには継続して入手しやすい材料が必要だったと考えられます。その様な観点からも考察を深めて下さい。発展として製紙技術と印刷技術の伝播についても理解を深めましょう。
(講評に興味のある方は、【講評】以下の行をマウスでドラッグしてハイライトさせて下さい。)
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