市立図書館で借りてきました。
1954年岩波書店発行ということでかなり古めかしい体裁です。『絵本』のイメージで借りたのですが、開いてみると文字の分量も多く挿絵の多い児童書という感じです。小さく細めの活字が使われており、言い回しが古めかしく、一つのセンテンスも最近の児童書に比べると長いような気がします。今の子どもには少し読みにくいかなあと思ったら案の定、我が家の小学生は『字が多いじゃん』と見向きもしません。
お話の舞台は第二次世界大戦後の冷戦時代。世界平和のために国際会議がひらかれるものの少しも成果があがらないことを怒った動物たちが、世界中から北アフリカの動物会館に集まり動物会議をひらきます。スローガンはただひとつ「子どもたちのために……。」
国境をなくし戦争をやめることを人間達に約束させるために、子供達を誘拐してしまうという強硬な手段の是非は別として、戦争やテロ、貧困・差別などがいつまでたってもなくならないことへの痛烈な批判を子ども向けのお話としてケストナーが語っています。
ワルター・トリヤーの絵も時代を感じさせるものですが、私が気に入ったのが、動物たちが電話で会議を開く相談をする場面。見開き2ページに電話線で繋がれた象・カンガルー・シロクマ・ねずみなどの動物達がぐるりと囲み、その囲みの中に文章が配置されています。最近ではすっかり見なくなったダイヤル式の黒電話を手にした動物たちの姿はとっても楽しそうで、ほのぼのとした雰囲気の中にも、何度話し合いを重ねても平和を実現できない人間の愚かしさをバカにしている感じが良く出ているのです。
ちょっと長いお話なので、小学校の読みきかせに使えないのが残念なのですが、大勢の子どもに読んで欲しいと思います。