ホロコーストから生き延びた理由【読書メモ】


 
ナチスの蛮行とユダヤ人が受けたどうしようもなく悲惨な体験は多くの人の知るところですね。
 
この本が特徴的なのは、アウシュビッツ収容所での数少ない年少の生存者の中でも当時4歳だっという少年の記憶をもとにしたものというところ。
 
彼と彼の親族たちがどのようにして生きのびたのかを、家族や知人の証言、その後の様々な記録をもとに再現したノンフィクションです。
 
少年が思い出を語る形に仕上げたために、文中の出来事については真実に基づいているけれど具体的な会話や感情についてはフィクションだと著者自身が序文で断っています。
 
当事幼かったゆえに記憶に自信がないからと家族にもその経験を語ることはなかったそうですが、反ユダヤ主義者のwebサイトで幼い自分の写真を見つけたことがきっかけで、事実をねじ曲げて伝えられることを恐れ自分の体験を語り残さねばと決心したそうです。
 
生存している親族や当時の知人からの証言、その他多くの記録を集め、ジャーナリストの娘さんの協力を得ながら記憶のピースを寄せ集め事実に忠実に組み立て直したとあります。
 
そのあたりの事情は序文とあとがきに詳しく書かれているので割愛。
 
 
幼い子が生き残っただけでなく、親族のほとんどがそれぞれの方法で生き延びていたというのは全く奇跡のような話。
 
奇跡ではありますが、たまたまの幸運だけではなかったのでは?というのがこの本を読んでの一番の印象です。
 
彼らが暮らしていたポーランドのジャルキという街では、ホロコースト前に暮らしていたユダヤ人3,400人程のうち解放後の生存者は30人に満たなかったそうです。
 
驚くことにそのほとんどがこの一族だったというのです。
 
しかも親族全員が一緒に過ごしていたわけではありません。
 
状況が酷くなる前にこ国外へ脱出した人、最後まで街に残り強制収容所へ連行された人、街はずれの家の屋根裏に隠れ住んでいた人、異教であるキリスト教の教会にかくまわれた子など、酷い時期をそれぞれの方法で生き抜いてきたのです。
 
そして解放後にそれぞれが思いがけないタイミングでの再会を果たしています。
 
これは単なる幸運だけではなく、この家族全員に共通する何かがあったからではないでしょうか。
 
ひとつには常に前向きで他者への思いやりにあふれた心の持ちようや、たとえナチスから課された仕事であっても真摯に取り組む姿勢。
 
その積み重ねによって他者からの信頼を得たことで小さな幸運を手にするチャンスも多々あったようです。
 
またこのような非常時には、咄嗟の判断能力や機転を利かせる力、他者の心の動きに対するカンの鋭さなど、ほんの小さなことが命運を分けるのだということもひしひしと伝わってきました。
 
このようなどうしようもない時代下においても、いかにして悪意のある他者を遠ざけ善意の人に囲まれて過ごせるかは、その人の心の持ちようや生き方に少なからず影響されるのだと強く感じさせてくれる物語です。
 
著者が「若い人たちに伝えなくては」という思いから語ったと言っていますが、少年の思い出語りという形が親しみやすく翻訳もとても読みやすいので是非若い人たちにも読んでもらいたいわ。
 
 
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