有川浩さんの小説『旅猫リポート』
とある事情から愛猫を手放すことになった少年が、引き取り手を見つけるために猫と一緒に大切な友人達を訪ねて旅する物語です。
「週刊文春」に連載されていた作品の単行本化。そして、村上勉さんが描いた連載の挿絵を中心にして後に出版されたのが↓こちらの『絵本 旅猫リポート』だそうです。
最初このような事情を知らずに『どうして同じタイトルの作品が2種類あるのだろう?』と興味がわいたので両方を図書館から借りてきたのでした。
単行本の方は大人向けの『一般書』の書架に、絵本は児童書の方に分類されていました。単行本も『青い鳥文庫』に文庫化されたくらいですから、お話の内容としては子どもが読むのにも適しているということでしょう。
単行本にはルビが振ってありませんでしたが、絵本はルビあり。青い鳥文庫のほうはどうなのでしょうかね。
内容の大きな違いは誰の視点で物語が語られるかという点。原作(といってよいのかしら)では、少年と猫が訪ねる友人たちの視点から彼らの少年時代を回想します。章ごとに異なる主人公の言葉で、少年たちの様々な事情や心模様を丁寧に描写しながら物語が進みます。
一方絵本の方では各ページに描かれた絵がメインで、それらの絵に添えるように文字が置かれています。そして旅の中で猫が初めて知ることになる少年の過去が、猫の言葉によって語られる形になっています。
村上勉さんの絵が好きな方にはとても素敵な絵本になっていると思いますが、先に原作の方を読んでしまったせいか絵本ではおはなしの内容的に物足りなさを感じてしまいます。
そしてこれはどうしようもないことなのですが、物語を読みながら自分の中で少年のイメージが出来上がってしまった後では、どうしても絵が邪魔になってしまうのです。
これはとても残念。絵本から先に読めばよかった〜!
これから読もうという方には絵本から先に読むことを是非お勧めします。