久々に心に沁みるエッセイ。
⇩こちらの記事で触れられていたので、ちょっと気になって読んでみた。
いったい、東京五輪・パラリンピックはこのまま開催するのか、中止するのか、延期するのか。新型コロナワクチンの普及も見通せない。霧のかかったような見通しの悪さに、イラーっと来ているのは私だけではあるまい…
著者の宮地尚子さんは、文化精神医学・医療人類学を専門としている精神科の医師。DVや性被害によるトラウマ患者に向き合う臨床医でもあるそうです。
とはいえ、これらのエッセイの中には傷ついた人に対するアドバイスめいたことは全く書かれていません。
旅先(ほとんどは出張のようです)での出来事や日々の心の動きを淡々と綴っているだけなのに、読む者の心を優しく癒してくれるのがなんとも不思議。
静かで柔らかくてちょっと物悲しいような文章の数々に、宗教家の独り語りを聞いているような気持ちになってくるの。
深い心の傷を抱えた人を癒す行為には、医療という合理的な手法だけでなく宗教に近い向き合い方が必要なのかもしれません。
前半は書き下ろし中心、後半は医学系刊行物に連載されていたものからピックアップされたもの。
すべての作品に共通する優しい眼差しの中に潜む揺るぎのない強さは、冷静に観察・分析する眼と繊細な言葉選びの賜物かしら。
この本のおかげで自分が結構疲れていたことに気がついてしまった。
ネットやSNS上に溢れるギスギスした言葉にばかり触れているせいだな。少し離れよう。
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