開館記念の企画展、全然人が入っていないらしい…
という話を風のウワサに耳にした博物館をオットとふたりで訪ねてきました。
宮城県石巻市にある複合文化施設マルホンまきあーと内に2021年11月にOPENした石巻
市博物館です。
その企画展というのがこちらのチラシ。
石巻市では3.11の津波で多くの美術作品が被災。それらは「文化財レスキュー事業」によって救出・修復され、遠い地で保管されていたのだそうです。今回は戻ってきたそれらのコレクションを展示するという企画。
津波を受けてめちゃくちゃになった収蔵庫から作品を救出する様子や破損・汚損した作品の写真が本当に衝撃的でした。
言われてみれば当たり前なのですが、現地ではカメラも流されてしまったために撮影での記録はレスキュー隊が現地に入った日から始まっているの。
当時沿岸部にあった「石巻文化センター」では、1F収蔵庫のシャッターが大きくねじ曲げられ、そのシャッターを大型カッターで切断する必要があったわけですが、そのカッターを調達するところから仕事は始まります。
瓦礫をかき出そうにも近くの製紙工場から流れ出した大量のパルプに悩まされながらの作業だったそう。
会場には、修復痕の残る彫刻作品や被災直後の悲惨な写真からは想像できないほど綺麗に修復された油絵。
被災した収蔵庫の1Fと2Fで分割して保管されていた2つの材からなる木の作品は、2階に置かれていて運良く水損を免れた部分と水損による変色が残る部分が組み上げられているので、その差が一目瞭然で被害の生々しさを感じました。
欠損した部分に石膏(だったと思うのですが)を補填して形を再現した彫像(だったかな、うろ覚え)も展示されていました。その補修部分が天使の羽だったの、痛々しい…。
どの作品も瓦礫の中から救出された直後の写真とともに展示されていて、その様子には本当に愕然。あの状態を目にした関係者の心痛はいかばかりだったでしょう。
津波による美術品の被害は陸前高田市と石巻がもっとも酷かったそうですが、津波を免れた地域でも地震の揺れで落ちたり倒れたりして破損したものが多数。また原発事故で立入禁止区域となった地区に取り残された作品もレスキューの対象となったそうです。
温度や湿度をコントロールできない環境下では作品が傷んでしまいますから放置しておくわけにはいかず、かといって立入禁止区域では作業ができないという、別の困難さを抱えた文化財もあったんだなあ。
2016年には『いま、被災地からー岩手・宮城・福島の美術と震災復興』というタイトルで、このレスキュー事業の5年を報告する展覧会が東京芸大の大学美術館で開催されていたそうで、その図録を今回いただいて帰ってきました。
帰宅して読んでみると3県の県立美術館からの報告があり、このプロジェクトが乗り越えてきた多くの困難や関わった方々の熱意が伝わってきてジーンとしちゃいました。
こちらにも「文化財レスキュー事業」の記事が。
ところで今回、常磐道〜三陸道を通って石巻まで行ったのですが、高速道路の高いところから目に入った帰還困難区域の様子に悲しみを感じずにはいられませんでした。瓦が落ちたり生活用品が散乱したあの日の姿がそのまま残っているの。
人の住めない家々の窓は割れ荒れ放題、耕作されずに放置された田んぼには雑草どころか雑木が育ち始めているのです。かつては青々とした稲が育っていたはずの田んぼはこのまま雑木林になってしまいそう。
また、田畑だった場所に太陽光発電パネルが設置されているのもたくさん見かけました。原発事故で使えなくなった田畑で太陽光発電というのも、なんとも皮肉な光景ですよね。
災害復興工事関係のトラックもたくさん走っていて、あれから11年経ったけれど3.11はまだまだ続いているのだと実感した週末でした。
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