教育関係者への3回の講演を書籍化したものだそうです。
本の分量(文字数)ほどには濃厚でなく、内田センセイの頭の中身がバラバラと流れてくるような感じ。
これまでにも何度となく発してこられたメッセージが並び、結局のところは
教育の目的は子どもたちの成熟を支援することであり、成熟とは複雑化することだ
につながっていきます。
3部構成のうち、ひとつは『教育の場』『学びの場』のお話。建築物としてのキャンパスや、学校という場所へ通うことの意味と不登校のこと。現代の学びの場が不健全になっているのではないかってお話でした。
二つ目の章では、ソフトとしての教育のあり方について。学校を営利企業として扱うようになり学校教育がマーケット化されてしまったことへの苦言、経済活動では効率が是であっても教育に取り入れることがなぜ非なのか。
そして最後に教師の役割や教師の働く場のあり方などなど。
正解を教えてくれるわけではないけれど指針になる考え方がちりばめられています。どこから読んでもよいし、つらつらぱらぱらと気になるところを拾い読みするのもよし。
いつものことですが、内田先生の言葉には深く頷くことばかり。ただ困ってしまうのは「我が意を得たり」と感じることはあっても、じゃあ私たち大人はどうしたらよいの? って途方にくれてしまうこと。
現場の教師にとってはなおさらではないでしょうかね。今の学校教育現場(特に公立校)で、内田先生のおっしゃることを実現するのはあまりにも難しい、というか不可能のように感じます。文科省の方針に沿って大きな歯車が動き出してしまっている中で先生ひとりひとりにその役割を求めるのは酷というもの。
かといって親だって毎日の生活に追われているのよ。複雑化する子どもとがっつり向き合い、学校教育に期待できない部分を親が背負うのはなかなかハード。
素晴らしい教育論を読んでいる満足感とは裏腹に、今の日本は社会も学校も家庭もすっかり余力がなくなって教育の質は下がる一方なんだろうなあ…、と虚しさでいっぱいになってしまったよ。
ところで、この本の中で『ドリームハラスメント』という言葉を知りました。以前書いたこんなもやもやってこれだったんだわ! とスッキリ。
高部大問さんという方の言葉だそうです。著書があるようなので読んでみようと思います。
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