先日のNHK-FM「ベストオブクラシック」は先日亡くなられた小澤征爾さんの追悼番組。
使われた音源はこちらでした。83回定期演奏会をNHKが録音したもの。
●モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136(125a)
●ハイドン:チェロ協奏曲 第1番 ハ長調 Hob.Vllb-1
●モーツァルト:交響曲 第35番 ニ長調 K.385<ハフナー>
この演奏会の記録がこちらに残っています。
水戸芸術館では2012年1月19・20の2日間開催されたのですが、録音は初日19日のもの。
確か1月22日は天皇皇后両陛下をお迎えしてサントリーホールで同じプログラムが演奏されています。
私、水戸芸術館の2日目に行っていたんですよね。
友の会の先行発売で2枚、一般販売で2枚の合計4枚を確保して家族4人で行ったの。
当時はMCOの定期演奏会には必ず来てくださっていたので、「いつでも聴ける」とのんびりしていたのですよ。
それが、突然の公演キャンセル・活動の休止とネガティブなニュースが続いたので「もしかしたら、水戸で聴ける機会は無くなっちゃうかも..」と思ってね。
公演再開との知らせに発売開始日は携帯電話と固定電話の両方からリダイアルを繰り返してようやくゲットした貴重なチケットでした。
ところが。
水戸の2日目は全曲指揮者なしでの演奏となったのです。
観客が全員席に着き、演奏開始を待ちわびていたところへ担当学芸員(たしか篠田大基さんだったか)登場。
小澤さんの体調が思わしくなく、直前まで検討を重ねた末の決断だったようです。前日の録音と2日後の天覧公演はかなり無理をなさったのかも。
小澤さんが振らないと告げられた時の会場のどよめき、驚きと落胆の入り混じったなんとも言えない重い空気は忘れられません。
そんな中、怒りの発言をされた男性がいました。なぜ会場入り口でその旨を発表しなかったのか、ホールに張り出すこともできたはずなのに開演直前に告げるとはどういうことか!、と芸術館側の姿勢を避難するものでした。
小澤さんの演奏を聴くためにわざわざ遠くから来ている(新幹線か特急という言葉が入っていました)こっちの身にもなれ、というような内容のことをかなり激しい口調でおっしゃっていましたね。
「水戸室内管弦楽団(MCO)の演奏を聴く場で良いじゃないか」と大きな声で反応した女性もいらっしゃいました。
ようやく復帰!との期待が大きかっただけに、そして前日は予定通りに公演が行われたのに、なぜ…という気持ちはあの場にいた皆さんが持っていたとは思います。もちろん私もそうでしたから。
怒号飛び交う..とまではいかずとも、かなり騒然とした雰囲気をどう収集するのかと心配になった頃、ひとりの男性が立ち上がりました。
館長の吉田秀和さんです(ちなみに吉田さんが亡くなったのはその4ヶ月後のこと)。
小澤さんの体調のこと、直前まで関係者全員で悩み抜いたこと、楽しみにしていた皆さんには本当に申し訳なく思っている、というようなことを静かに釈明されたのです。
今回FMで放送された録音は確かにあのプログラム。
でも、小澤さんは振らなかった。
それなのに水戸芸術館で行われたライブの録音が小澤さんの指揮で残っているのかどうにも釈然としなくてあれこれ記録を探しちゃいました。
この演奏会記録を見るまで、第83回定期演奏会では全く同じプログラムが2日間組まれていて自分が行ったのは2日目だったということをすっかり忘れていました。
それにしても、あの日のそんなゴタゴタのあとのモーツアルトのディヴェルティメント。冒頭の弦楽器のtuttiの熱量がそれはそれは凄まじかったです。もうね胸熱すぎて涙が出そうでした。
2曲目のチェロ協奏曲もね、突然の指揮者なしというハプニングに立ち向かう若き大ちゃんに「ドンと来い!」と彼を全力バックアップするMCO。あの緊張感あるコンチェルトも本当に素晴らしかったなあ。
かつてはMCOの常任揮者としてたびたび水戸で指揮棒を振ってくださった世界のオザワさん。
水戸芸術館開館以来30年以上もの長い間関わっていただき本当にありがたいことでした。心からご冥福をお祈りいたします
今頃天国で吉田秀和さんと久々の音楽談義されているかしらね。
#水戸芸術館
#小澤征爾
#吉田秀和
コメント
ずっとLEE様の記事は読んでいましたがコメントまで辿り着かず。
今回の記事を読んでじーんと来てしまいました。
きっと会場のざわめき、怒鳴り声、楽団の人にも聴こえていたと思います。
それを跳ね除ける素晴らしい演奏をされた楽団の方々に敬意を表したいです。
人は必ずいなくなります。
けれどその人のスピリッツというか目指していきたいものを受け継ぐ人は必ず現れる。
残された楽団員さんもまた成長されると思います。
これからも応援したいですね。
グリコ様!
お久しゅうございます。コメントありがとうございます。
私もグリコ様の記事は欠かさず読ませていただいていますが、コメントを書くに至らず読み逃げばかり(^^;)。
本当にね、なんとも言えない苦い公演でした。
MCOのメンバーは小澤さんとは戦友のようなもの。アクシデント発生で逆にパワーアップって感じでしたね、ふふ。
宮田青年もすっかり立派なチェリストになられて、あのステージを思い出すとおばちゃん泣けて来ちゃいます。
昭和生まれの偉大な人物が次々とこの世を去ってしまうのは、仕方のないこととはいえ寂しいことです。
グリコ様の「スピリッツを受け継ぐ人は必ず現れる」、けだし名言。
次の世代の人たちを応援しなくちゃだわ。
それではまた! ごきげんよう〜。