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STAP細胞事件と『カンター教授のジレンマ』

『カンター教授のジレンマ』をやっと読み終わりました。



1990年代に書かれた本のようですが、昨年のSTAP細胞事件が決着した頃に新聞だったかでこの本が紹介されていたので興味をそそられました。

舞台はアメリカ、著者は有名な化学者ということで、化学研究現場の雰囲気がリアルに描かれています。

STAP細胞研究で焦点となった実験記録のあり方がこの小説の台風の目ではあるのですが、それを核とした研究成果をめぐる人間模様や心理的駆け引きが小説として楽しめました。

小説中に登場するいくつかの研究テーマ(メインとなる腫瘍形成理論はフィクションだそうですが)やノーベル賞に関する記述などはほぼ現実のもとということで、読んでいる最中にフィクションとノンフィクションの境目が分からなくなるような不思議な感覚を覚えます。

人間模様があっちこっちに飛ぶので、なかなか面白いと感じるとこまでいけなくて途中何度も挫折しそうになりました。

それでもなんとか読み進むうちに、尊敬するカンター教授からの信用を失ったと気づいた若き研究者からだんだん目が離せなくなってきました。

その若き研究者の行動を上手に利用するカンター教授のライバル(というか彼の尊敬する研究仲間でしょうか)の態度も人間臭くて、科学研究とドロドロした人間関係との対比が面白かったです。

読み終わってから、もう一度ざーっと全体を読み直したら、お話のポイントが明確になってすっきりしました。