著者は『カソウケン』の内田麻理香さん。かつては『化学で東大博士課程まで進んだあとサイエンスライターに転身した美人お姉さん』というイメージでしたが、現在はなんと東京大学・学際情報学府博士課程で研究活動をされているそうです。
研究テーマ:サイエンスの興味の潜在層に向けたサイエンスコミュニケーションの研究
サイエンスコミュニケーションは本来、万人に向けられているはずなのに、ファンの中で止まっているのはなぜか? というのが本研究の出発点です。
現状のサイエンスコミュニケーションの理論を整理し直し、コミュニケーションそのものや、”文化”とサイエンスの関係を問い直すことを通して、より多くの人に届く新たなサイエンスコミュニケーションの枠組を構築します。
また、その新たな枠組を通し、自らの実践や他の優れたサイエンスコミュニケーション活動を分析することで、よりよいサイエンスコミュニケーションの実践のデザインの方策を提案し、世の中に還元し、サイエンスコミュニケーションの新たな展開に貢献することを目指しています。内田麻理香:カソウケン(家庭科学総合研究所)webサイトより
『疑うことからはじめよう』をキーワードに、科学リテラシーについてやさしくやわらかく説いています。科学なんて〜と尻込みしてしまう読者層にも読む気を起こさせるような工夫が散りばめられていて、なるほど日々こういうことについて研究を重ねているのね、と納得。
はるか昔ですが、理系畑を垣間みてきた身にとっては共感できる部分がとてもたくさんありました。
『科学』っぽい言葉が出てくると思考停止になってしまったり、科学は白黒はっきりしているという思い込み、自分でよく考えずに妄信してしまうなど、私達がはまりがちな態度に『ちょっと待った!!』を投げかけています。
その他、理系人が陥りがちな罠や、科学技術マニアだけにご意見番を任せる危険性など、これまで考えたこともなかったような視点からの話がとても興味深かったです。
こういうことって本当は公教育が担わなくてはいけないベーシックな分野だと思うんですが、英語や道徳とちがって学校では重要視されないのが残念。