先日のうれしい贈り物がきっかけで、手持ちのバージニア・リー・バートン絵本を引っ張り出してみました。
いろいろ気付いたことがあったので、まとめてメモ。
英語版と日本語版の両方を比較してはじめて気づいたことばかりでした。
おうちの前に書いてある『HER-STORY』の文字が….
日本語の表紙には書かれていない!!!
この『HER-STORY』の言葉は、英語のHistoryがHis Storyから来ていることに対して『男性だけが歴史を作ったのではない』というバートンさんの思いが込められているのだそう。
日本語版を出版する際にそんな大切なことばを省いてしまったのか…とショックを受けました。
省かれていると言えば、こちらも。
夫ジョージへの献辞がない!
彼女の幼い子ども達がまだジョージと発音できずドージーと言っていたので『to Dorgie』となっているのだそうです。
この花環だけのイラストをずっと不思議に思っていましたが、本来ならこの中に文字がおかれていデザインが完成していたはずなのに、文字が省かれたため何とも収まりの悪い風景になってしまったようです。
これも本当に残念。
初版は1965年ですから特に英語を徹底的に排除する理由もないし….。
それとも子ども向けの絵本には、たとえイラストであっても英語の文字を残さないなどという考えでもあったのかしら。
当時どのような意図があったのか知りたいものです。
そしてもうひとつのがっかり。
福音館が出版している『けいてぃ』は英語版ハードカバーの装幀と違っていたこと。
紙のカバーをはずすとこんな感じ。
左から『けいてぃ』英語版、『けいてぃ』日本語版、『ちいさいおうち』日本語版。
英語版『けいてぃ』は、カバーとは違う絵が布張りの表紙にシルクスクリーンで印刷されています。
どちらも本文中には登場しない絵なの。とっっってもカワイイ『けいてぃ』の笑っている顔が日本語版では見られないのですよ。
あれ!?と思って他の本も確かめてみたところ…
『ちいさいおうち』はカバーとは異なるデザイン。上の写真の通り布張りシルクスクリーン印刷。
『せいめいのれきし』もカバーとは違い太陽のようなデザインが布張りに箔押し(1964年版です。2015年改訂版は確かめていません)。
『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』と『ちいさいケーブルカーのメーベル』もカバーと本体表紙は同じデザイン。
『ちいさいおうち』『ちゅうちゅう』『せいめいのれきし』『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』の英語版はペーパーバックしか持っていないので、オリジナルの装幀を確かめるられず残念。
岩波書店から出版されている2冊は本体が布張り装幀なので、多分英語版ハードカバーと同じなのだと思います。
他社に比べて値段が高いのはそのせいなのかしらね。
私は400円の差ならオリジナルと同じほうがいいなあ…。
『ちいさいケーブルカーのメーベル』は2011年に新版が出ています。
訳者・タイトル・出版社が変わったのですね。
あわてて、かつらゆうこ・いしいももこ共訳の旧版を中古で入手。
おはなしのストーリーは同じでも翻訳の方向性が全く違います。
小さい子へのよみきかせを考えるなら旧版、大きい子や大人がケーブルカー廃止反対の市民運動について知りたいなら新版というところでしょうか。
前者は耳で聞く読書、後者は目で読む読書向けという印象を持ちました。
そして現在『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』の日本語版が手に入らないようです。
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