『遺言』っていうから、なにか人生論的な内容かと思って読み始めたら全然違ったわ。
ヒトとは何か。生きるとはどういうことか。
同じとは?違うとは?
『意味』って何?
意識とは?言葉とは?
などなどを、哲学的、脳科学、生物学分野の周辺を近づいたり遠ざかったりしながら、解剖学者(なのかな?プロフィールには書いてないね)らしい視点で書かれています。
まえがきに『老人のブツブツだと思って読んでくれ』とあるように、養老先生の頭の中を駆け巡るあれやこれやがただただ流れ出ているような印象ですが、頭の中がぐるぐるかき回されるような感覚はなかなか気持ちよいものですね。
中高生向けの『ちくまプリマー新書』から。
インターネットから情報を拾うと、自分に都合の良い意見ばかりに目がいってしまいがち…とか『フェイクニュース』ってなぜ生まれるの?
両論併記の罠や言い換え後に丸め込まれてしまう危険。
相手が『言わないこと』にこそ注意せよ、とかね。
『聞く』ことをおろそかにしない、相手の言葉に耳を傾けることの大切さなど、どのページを開いても若い子達に伝えたいことがたくさん詰まっています。
新聞もテレビ・ラジオも鵜呑みに出来ない、政治家なんて信用できない大人の代表と成り下がっている今の社会で、何を信じれば良いのか本当に難しいです。
相手の立場に立ったり、多様な価値観を受け入れることを日頃から心がけることの大切さは自分の子ども達にも折あるごとに伝えてはいるけれど、自分が本質をつかんだ判断ができる大人かと言うとまったく自信なし。
メディアが都合よく編集したものやキャッチーに書かれたものばかりに目が行くことや、ワイドショーに出演する芸能人のコメントにひっぱられた井戸端会議で『それって違うんじゃない?』と口に出来ないこと。
うーん、わかっちゃいるけど難しいな…。