建築家の自由【読書メモ】
久々に心が震えるような本に出会ってしまったという気がしています。
日野市立図書館の設計を手掛けた建築家、鬼頭梓さんの足跡・インタビュー・論考などを纏めたもの。
その時の前川恒雄館長との出会いが、その後図書館建築を生涯のテーマとするきっかけとなったそうです。
表紙にもなっている日野市立図書館。この静謐な雰囲気がなんともいえません。
背筋を伸ばして表紙を開くと….
前半はその生い立ちや建築家としての歩み、前川氏との出会い等についての記録的な内容が細かい文字でびっしり。
インタビューから書き起こしたもののようですが、鬼頭氏が実際に語った雰囲気を大切に文字にしている感じが伝わってきます。
後半は建築関係の雑誌などに寄稿したものが集められており、日野市立図書館や洲本市立図書館など氏を代表するいくつかの建築についての論考や、建築に対する姿勢などが静かな炎のような言葉で綴られています。
特に『建築家の自由』というタイトルの章では、建築家の使命・責任というものに触れおり、建築家に限らず『仕事とはこういうものだ』とピシリとムチを当てられたような気分になります。
また、建築家が自分の表現を優先して奇抜なデザインをすることについても言及していて、図書館の設計に求められること大切なことは何かということを書いておられます。
私自身そんなに多くの図書館に行った経験があるわけではないのですが、有名な建築家の手による『わ〜素敵!!』と強烈な印象を与えるようなデザインの建物が『図書館』として印象がよかったかというと必ずしもそうではありません。
パッと見の印象は素敵でもなんだか落ち着かず、長居したい気持ちにならないのです。
有名な建築家の設計で賞を受けたこともあるような有名な図書館なのに、ちっとも魅力的に感じないのは自分の感覚がおかしい…?と思ったこともあるのですが、鬼頭さんの図書館建築論を読んでみると大変納得できるものがあります。
やはり『図書館とはどういうところか』という思想をきちんと持った上で作られたものと、自治体が話題性に目を向けて依頼したものとでは自ずと違ってきてしまうのしょうか。
日野市立図書館と洲本市立図書館、行ってみたいなあ。