現役中学生ならではの小説【読書メモ】
『12歳の文学賞大賞』を小学4・5・6年生時に3年連続した鈴木るりかさんの新作書き下ろし。
受賞作品をもとにした『さよなら、田中さん』を含む連作短編集もよかったし、いや〜素晴らしいわ!!
前作では小学生の視点でしたが今回は中学生たちが主人公。
短編小説を学校の時間割に見立て、7つの物語が展開されます。
どのお話にも背景に老人やLGBT、スクールカースト、母子家庭などのテーマがさりげなくとりあげられていて、現役中学生である作者の感性で小説の形にしているという感じ。
各編別々の生徒が主人公なのだけれど、全編通して登場する中原少年の存在がキーになっているのも面白いです。
『現役の中学生が書いている』というのがミソで、それぞれのエピソードは同世代中学生が共感できそうなことばかり。
現実に目の前にいる子ども達も上手く言語化できずにいるだけで、実はトゲトゲだったりドロドロだったりキリキリだったり複雑な気持ちを抱えながら毎日を過ごしているんだろうなあと気づかされ、大人目線で読んでも十分に面白い。
作者が感じていることそのままが各編の主人公を通して描かれているからこそ、まるでその子が目の前に実際にいるような気持ちになってしまう。
ありふれたテーマのようでありながらその切り取り方に『おっ』と思わせられるし、語彙や表現の引き出しをたくさん持っているところが読み手を惹き付けるポイントなのかな。
作者の成長に沿った新しい小説がこれからも定期的に発表されるのを楽しみしています。