失礼ながら、村上春樹氏がこんなにも音楽に造詣が深いなんて存じ上げませんでした。食わず嫌いで先入観に凝り固まっている自分を反省しました。
ご自分では演奏はしないし楽譜もほとんど読ない素人ですとおっしゃっていますが、演奏者側の経験も楽譜を読んだ経験もなくて、『世界のオザワ』からこれだけの話を引き出せるなんて本当に驚愕です。
膨大な量のクラシック音楽を聞いておられる上に、その知識や演奏会の記憶をきちんと自分の引き出しにしまい適宜取り出すことができること、そしてその経験や演奏について感じたことをお上手に言葉で表現できるのは、さすがに『世界のハルキ』だと感じました。
素人だからこその素朴な質問をストレートに小澤さんに投げかけることで、私たち読者にもすっと納得できるような答えを引き出しています。
若い頃と現在での音楽に対する取り組み方の変化や、若い音楽家に指導するスタンス、音楽を勉強する(楽譜を読み込む)姿勢などなど興味深いお話がたくさん語られています。
「あとがきです」の中で小澤さんが、村上氏と個人的にお知り合いになったきっかけや、氏のおかげですっかり忘れていた昔の思い出が次々と溢れてきたことについて触れていますが、恩師である斎藤秀雄・カラヤン・バーンスタインとの思い出やグールドや内田光子さんはじめ世界の名だたる音楽家との交流についての貴重な話を小澤さんから引き出し、かつ記録して出版してくださったことに感謝します。
読後に装幀を見ていて気がついたのですが、表紙のデザインは楽譜なんですね♪。裏表紙はわかりやすく五線紙ですが、表紙では五行ごとに区切った文章を五線紙に見立てて題名が音楽になっている感じでしょうか。
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