レポートのキロクさらに 情報資源組織論 (4)  ー司書課程受講物語 (69)ー

未公開レポートがまだありました。

科目終了試験もスクーリングもすっかり終わり忘れた頃に返却されてきた『情報資源組織論』です。
 
第1課題
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【第1課題】 情報資源組織法の目的・意義およびその方法について、今日の図書館サービスとも関連させ考察しなさい。
 
 
【はじめに】
 図書館にとって、資料管理と利用者サービスに不可欠な情報資源組織について、その目的と意義、方法について以下に述べる。
 
 
【本文】
1)情報資源組織の目的と意義
 利用者や図書館員が情報を求めて探索する際に、膨大な資料を効率よく短時間で検索できる仕組みを作ることが「情報資源の組織化」である。情報そのものではなく、それらが含まれる大量の資料を一定のルールに基づいて整理分類することで秩序や構造を与え、検索・利用可能な状態にすることが情報資源組織の目的である。
 たとえ小規模な図書館であっても、数万冊単位の蔵書を有することが多く、資料検索ができなければ館内閲覧・館外貸出・レファレンスサービスといった図書館の基本的なサービスの提供が成立しない。
 
2)情報資源組織の方法
 図書館の資源組織は資料の選択・収集に始まる。入手した資料は主題や形態、利用対象など館の性格に合わせた形で分類・配架する。この分類・配架にあたっては、分類順(主に主題による分類が用いられる)に配列する「書架分類法」と、資料が持つ情報を用いる「目録法」がある。
 前者は、主題による分類記号または独自のテーマ(郷土資料や館オリジナルのテーマ)に基づいて資料を排列するもので、利用者が比較的容易に目的の資料を探しその場で選択判断できる。現在の公共図書館は大部分が開架式であるため「書架分類法」による配架が行われている。しかしながら、この方法はひとつの資料にひとつの分類しか与えられない(1箇所にしか配架できない)こと、閉架書庫にあるものや貸出中の資料は探し出せないという短所がある。その短所を補うのが目録法である。書誌情報に所在情報を加えた目録は「物」である資料の代替物であり、資料に関する複数の要素を盛り込むことができるため、主題・タイトル・著者・出版者など複数のアクセスポイント(標目)から検索可能である。また、現物が書架になくとも利用者がはその資料の存在をしることができる。現在ではカード式目録に代わりMARCレコードを用いた電子目録が主流となっている。目録には主題・タイトル・著者・出版者・出版年・版情報・大きさ・記録媒体の種別や形態といった書誌情報の他、分類番号や配架場所を記載する。書誌情報はJAPAN-MARCやTRC-MARCからのコピーカタロギングが進んでいるが、館内での所在の情報は、視聴覚資料・児童書・参考資料などその館独自の配架方針に沿って付与する。
 目録作成と同時に、資料と目録を紐づける作業を行う。蔵書印・資料番号・分類番号の他、別置や禁帯の表示をして初めて利用者に資料提供ができる。
 近年の資源組織の課題としては、CD・DVDのような電子メディア及びインターネット上に公開されたネットワーク情報資源がある。電子メディアの閲覧は再生機器に依存することから、機器の整備体制も含めて考えなくてはならない。またネットワーク情報資源には所蔵という行為が存在せず、上書更新される性質のものであるので、収集日時やURLの記載が必須である。
 
 
【おわりに】
 多様な情報資源を収集・保存する一方、それらを利用に供するための組織業務は図書館の重要な責務である。
 近年ではコンピュータやインターネットの発達に伴い、情報資源の範囲は拡大し、資料検索に対する利用者の要求も広がっている。図書館員は多種多様な資料を多角的に把握し、利用者の要求にいかにして応えるかという視点で資源の組織化にあたることがますます求められる。
 
 
以上
 
 
【講評】評価:B
 現代の図書館サービスにおける情報資源組織の意義について概ね理解できていると思われます。あえて付け加えれば、情報資源組織の意義及びその方法についてはしっかりと述べられていますが、情報資源組織と図書館サービスについての記述がもっとあればさらに良いレポートになったと思います。 
 
(講評に興味のある方は、【講評】の下の数行をマウスでドラッグしてハイライトさせて下さい。)
 
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レポートのキロク-その2- 図書館サービス概論 (9)  ー司書課程受講物語 (68)ー

昨日の続きで『図書館サービス概論』のレポート公開、第2設題です。
 
 
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【第2課題】 図書館は、多文化サービスとして、どのような活動をすべきか述べなさい。
 
 
【はじめに】
 異なる文化的背景を持つ人々が共に暮らす社会のあり方として、ひとつにはグローバル化という言葉で表される国境や民族を越えた画一的でフラットな社会がある。一方、異なる言語や文化を互いに尊重し共生する「多文化社会」という考え方がある。後者の立場から、図書館行うべき多文化サービスについて考えたい。
 
 
【本文】
 日本では、単一言語・単一民族国家を前提とした社会が成り立ってきた。しかし実際には、在日韓国・朝鮮人や日系ブラジル人をはじめとする外国からの移住者とその子孫、日本の先住民族であるアイヌなど独自の言語・文化を持つ人々が居住している。近年、このような民族的・言語的マイノリティの知る権利の保障について認識し、正当な利用を妨げない環境づくりの重要性に目が向けられるようになった。図書館が果たす役割としての多文化サービスを以下の3点に分けて考えた。
 
1)ソフト・ハード両面での受け入れ態勢について
 ソフト面で最も重要な点は職員の意識である。異なる文化を持ち日本語以外の言語を母語とする利用者を特別視することなく、普段通りに利用者が求めるものを知り最良のサービスを提供しようとする態度が大事なのではないか。このような意識が資料収集や集会・広報活動を行う際に判断の拠り所となるはずである。一方ハード面では、館内サイン表示の工夫と利用案内・掲示物の多言語化がある。特に館内の案内表示については、誰もがひと目で分かるピクトサインがベストと考える。これは、識字率の低いメキシコの公共施設で目にしたピクト表示が、言葉の分からない旅行者にも大変役立った自身の経験からである。また複数言語での利用案内や掲示物を作る際には、潜在利用者も含め必要とされる言語を十分に把握検討し、地域に住む外国人の協力を仰ぐことが重要と考える。
 
2)資料の収集について
 まず新聞や雑誌などカレントな情報に触れることのできる資料が必要である。その国で広く読まれている雑誌や小説、映画DVDなど、母国では当たり前に手に取れる資料を揃えたい。また、日本の文化習慣や日本社会での暮らしに必要な情報がその国の言葉で書かれた本も必要である。加えて、彼らの文化や歴史をその国の言語と日本語両方で著した資料を揃えることは日本人の異文化理解を深めるためにも役に立つはずである。これらの資料を集めたコーナーは目につきやすい場所に配置し、複数の言葉での案内表示をつける。日本人を含めた利用者全体に多文化共生のメッセージを送ることを意識したい。
 
3)集会・行事の開催
 マイノリティの人々が参加できる行事を開催し、図書館が多様な人々の交流の場であることを積極的にPRする。特にこどもが参加しやすい工作教室やお話会などの行事は、参加したこどもだけでなくその親達にとっても図書館に関心を持つきっかけとなるはずである。その他、通訳付きの図書館ツアーを開き館内や利用方法を彼らの母語で説明することや、外国の絵本をその国の言葉でよみきかせる機会を設けることが考えられる。
 
 
【おわりに】
 多文化サービスは、乳幼児や障害者に対するサービスの延長である。たとえマジョリティ層の利用者であっても、個々人を見れば多様な生活背景があり身体的・精神的差異を有している。国籍・母語・文化的背景にかかわらず地域に居住する全ての人々が自分の居場所と感じられる図書館にするためには、「違い」を当然のこととして柔軟かつ多角的な視点に立ち、資料収集、広報活動、行事・集会の企画運営にあたることが重要である
 
以上
 
 
【講評】評価:A
 多文化サービスへの基本的な考え方とサービスの方法についてよくまとめられています。この上に現状を把握したレポートの内容があるとさらに学習の成果が顕著となる内容と思われます。
 
 
(講評に興味のある方は、【講評】の下の数行をマウスでドラッグしてハイライトさせて下さい。)
 
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レポートのキロク 図書館サービス概論 (8)  ー司書課程受講物語 (67)ー

『勉強する主婦』カテゴリにメイン登録しております。すっかり『勉強していない主婦』状態の記事ばかり書いているので、久しぶりにレポートの記録を。
 
昨年書いた『図書館サービス概論』のレポートです。(既に返却済・終了試験合格済)
 
 
通信で司書資格をとろうとしている方は世の中に結構な数いらっしゃるようで、素晴らしいポートをアップしていらっしゃる方も。
 
近大の方がほとんどで聖徳の方のレポートを目にしたことはありませんが、自分がレポートに取り組むときは参考にさせてもらうことが多いです。
 
学校が違うと(というか先生が違うと?)設題も若干異なりますが、同じ科目ですからポイントはほとんど同じ。何を大事に取り扱うのかやポイントになる事柄への視点、言葉の使い方など、やはり共通するものがあります。
 
自分が利用させていただくだけの側では申し訳ないのでお粗末ですが以下公開。
 
多少なりとも頑張る同志の参考になれば幸いです。
 
 
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【第1課題】 公共図書館での貸出サービスはなぜ重要であるかについて述べなさい。
 
 
【はじめに】
 図書館を利用する市民ににとって、本を借りるという行為は当たり前のことであり、図書館=貸出と言っても過言ではないほど基本的サービスと認識されている。公共図書館において貸出がなぜ重要であるのか、利用者側とサービス提供側、両方からの視点で以下に述べる。
 
【本文】
1)利用者にとっての貸出の重要性
 利用者が貸出を必要とする最大の理由は、時間と場の制約を受けずに資料を利用したいというものである。多くの人々にとり、本を一冊読み終えるだけの時間を連続して図書館で過ごすのは現実的でない。通勤通学の車内、職場の昼休み、帰宅後のリビング、幼い子どもならば就寝前のよみきかせというように本を読む時間と場所は多様である。プライバシーの面でも、図書館での閲覧は他人の目が気になるとか職員への複写依頼は気が進まないという利用者も多いはずである。
 
 また、特に幼い子どもの場合『借りる』という行為そのものが読書欲を育むと感じることがある。「今日は◯冊しか借りられないの、また今度ね」と親に諭されている子の落胆ぶり、「私たくさん借りるの!」と絵本を抱る表情は、たとえ一時的であっても『自分のもの』として家に持ち帰る楽しみが、そのまま本を読む楽しみに直結していると感じさせる。また、色褪せや傷みの度合いとともに手にとられなくなることも、『所有』の楽しみと本を読む楽しみがリンクしていること物語っているのではないだろうか。仮に貸出サービスがなかったとして、読みたい本を全て書店で購入する人々は金銭的も収納空間的の点からも少数派であろうし、館内閲覧に限られた図書館を利用する市民の数もそう多くはないと想像できる。つまり貸出サービスがあるからこそ、人々は図書館に足を運び多くの本を手にとるのである。
 
 一方、入院患者や施設入所者、刑務所収容者のように外出が制限される人々にとって、図書館の貸出サービス(施設への団体貸出という形であっても)は社会とつながるための大切な窓口である。物理的に外出が難しい人々(障害者も含む)は、テレビやラジオなどメディアが切り取った情報を受取るだけになりがちであり、このような人々に社会の多角的な情報や適切に選書された文学作品を自ら選択する自由を保障するためにも、図書館からの貸出は重要な意味を持っている。
 
2)サービス提供側にとっての貸出の重要性
 サービスを提供する図書館側にとっても、貸出は単に資料を手渡すだけでなく利用者とコミュニケーションを図る好機である。借出される資料を毎日観察することで利用者が求めているもの知り、カウンターでの会話が読書案内やレファレンスサービスにつながる。さらにそこから新たな本の要求が人々の中に喚起され、職員の選書や保存に対する意識向上を促す。つまり貸出があるからこそ、様々な図書館サービスの輪が廻るのである。
 
 
【おわりに】
 時間・場所・管理・使い方を制約されず自由に資料を利用できることは読書への意欲を刺激する。図書館の貸出サービスは市民の本を読む楽しみや知識欲の充足にダイレクトにつながっているのである。また生活上の物理的な制約により情報へのアクセスが難しい人々にとっては、社会と繋がる重要な窓口となり得る。
 
 図書館側にとっても利用者の要求を知り、種々のサービスを向上させるための重要な役割を持っている。
 無料貸本屋と揶揄されたり、新刊書の貸出に対して厳しい意見もある昨今だが、貸出は図書館の重要なサービスとしての認識を持つと同時に、市民に対してもその意義を伝えていくべきであると考える。
 
 
以上
 
 
【講評】評価:A
 よくまとめてあります。貸出サービスを利用する人のために、予約サービス、リクエストサービス等も行われ、互いの信頼を築く上でも大切なサービスの一つです。
 
 
(講評に興味のある方は、【講評】の下の数行をマウスでドラッグしてハイライトさせて下さい。)
 
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情報資源概論 (4)  ー司書課程受講物語 (39)ー

先日返却されてきた『情報資源概論』のレポート、第2課題について記録しておきます。

 
【第2課題】 資料収集と提供に関する具体的事件を取り上げ、図書館の自由の視点から問題点を解説しなさい。
 
 
はじめに
 民主主義社会において国民の「知る自由」が保障されることは不可欠である。そのために図書館が果たすべき任務として「図書館の自由宣言」に謳われている5項目のうち、資料収集と提供の自由に関する具体的な事件を挙げ、その問題点を以下に述べる。

 
本文
1. 資料収集の自由に関して
 公共図書館では、議員・議会、宗教団体や各種外部団体からの要求に対して難しい判断を迫られるケースがある。一例として1983年に品川区議会議員が区立図書館に対して要求した蔵書リスト提出がある。労働問題分野に関する偏向を指摘した上での要求であったことから図書館員らは検閲の懸念を示した。館長が業務命令として発令し3日後に撤回するなど紆余曲折を経て最終的に一千冊以上のリストを提出した。公開された目録情報を殊更にリスト化するという通常レファレンスの範囲を超えた要求を、調査権限を持たない議員個人があたかもそれにに基づくような要請をしたことは図書館への圧力・検閲行為と捉えられかねない。圧力が図書館側の自主規制を招き選書の中立性を欠くことに繋がる恐れがある。
 また、選書への介入が起きやすいのが学校図書館である。愛知(1981)や千葉(1984)の県立高校で管理職が購入禁止図書を指定した例が有名である。購入禁止の理由は、戦争・革命・自由・運動・組合・女性解放の拒否、著者の思想背景から「偏向している」としたものが多かった。生徒が「教育的配慮」の名目で一方的な考え方を押し付けられたり、幅広い意見に触れる機会を奪われることの無いよう学校図書館においても十分に配慮されなければならない。ただしこのような介入が権力による検閲に当たるのか、校務の責任者としての権限と捉えるかは難しい問題である。教育界全体で生徒児童の「知る自由」と学校図書館のあり方について考えるべきである。
 
2.  資料提供の自由に関して
 既に収集した資料の提供が妨げられる例として(1)内部職員の個人的な志向による抜き取り、(2)差別用語・差別的表現を理由とした利用制限がある。(1)については、職員個人の物差しで資料の中立性や、政治・思想・意見の善悪を判断すべきではなく、図書館員としての職務を十分に自覚し常に襟を正す必要がある。(2)については「ちびくろサンボ」の絶版・廃棄事件、「ピノキオ」回収要求・閲覧制限事件がある。これらの書籍で指摘されている人種や障害者に対する差別の問題については、関わる当事者の意見を尊重するとともに広く市民が検討に参加することが必要である。資料の提供を一方的に制限することで市民の「知る権利」を奪い、問題点の判断を妨げることはあってはならないと考える。また(2)に関しては部落差別的記述を含む郷土史が人権を侵害するものに当たるのか、また部落解放に逆行するのかという議論がある。同和対策に敏感になるあまり資料を廃棄したり提供を制限することは、市民の目を差別解消から逆に遠ざけることになるのではないか。特定個人のプライバシーを侵害しない限り、タブーに蓋をするのではなく部落史研究の資料として十分活用され自由な学問的議論がなされることが必要と考える。
 
おわりに
 自分が置かれた社会の諸問題について考え判断しようとする時「自分の知らない事実がある」のは恐ろしいことである。過去の歴史であれ現在進行形の事象であれ、私達市民が欲しい時に欲しい情報を得られる世の中でありたい。民主主義の根幹を支える「知る自由」を担保するため、図書館員のみならず社会全体が「図書館の自由」に常に敏感であり続けなくてはならない。

 
以上
 
 
【講評】評価:B
 合格です。事例も適切。但し、図書館の自由については 1.どのようなことか 2.なぜ大切なのか、その点について説明出来るように学習を深めましょう。市民でもこの点を知らない人が極めて多いのです。利用者や関係者に説明できることが大切です。その場合、「宣言」にあるからというのでは説明になりません。図書館の自由は、民主主義社会における市民の知る権利を保障する目的があることに根ざして、歴史も含めて理解することが大切です。
 なお、事例の検討では、一つ一つの事例について、 1.どの部分が問題なのか 2.なぜ問題なのかを分析し、それを図書館の本質や主権在民とそれを知る権利で支える図書館という視点で考察を深めてみましょう。

 
 
 

指摘された点を、もう一度ゆっくり考えてみたいのはやまやまなのですが、帰宅したらご飯作って食べて風呂に入って、寝る…が精一杯の毎日で勉強どころではないのがつらいところです。
 
 
 

情報資源概論 (3)  ー司書課程受講物語 (38)ー

5月に書き上げて提出した『情報資源概論』のレポートが返却されてきました。
 
結果はどちらの課題も『B』ということでかろうじて合格といったところ。
 
お恥ずかしいですが提出したレポートをそのまま記載してみます。
 
 
 

【第1課題】 選書における代表的な理論について説明しなさい。
 
はじめに
 公共図書館では、各館の収集方針に基づいて図書を収集し蔵書形成を行っている。個々の図書の選択を判断する際の代表的な考え方について以下に述べる。
 
本文
 これまで提示されてきた多くの図書選択論(選書論)は大きく分けて二つの考え方に集約される。一つは図書の「価値」を基準とするもの、もう一つは利用者の要求の高さを基準とするものである。この二つの考え方は論者により「価値論」と「要求論」、「質志向型」と「要求志向型」、「読むべき本を提唱する」と「望みの本を提供する」のように表現されている。いずれの場合においても前者は本の内容・質という意味での「価値」を、後者は利用者の「要求」を重視している点で共通している。
 
 1.価値論について
 日本においては、戦前は「価値論」に基づく収集が大きな流れであり、国や図書館の選択した「善良なる本」を収集することを目的としていた。ここでいう「善良なる本」とは国策に有益な思想や主義を国民に植え付けるための図書である。図書館は国民を教化するのに適した図書を選択し読ませるための施設であった。
 戦後、図書館法が制定されたると国の政策からは離れた、図書館による自主的な選書が行われるようになったが、基本的には図書館員の判断による「良書」の提供が中心であった。このような図書選択は「読書はこうあるべき」という図書館員の価値観の押し付けになってしまいがちであり、必ずしも利用者の求めるものとは一致しないことも多い。
 
 2.要求論について
 1970年代に入り、日本図書館協会による「市民の図書館」が新しい図書館サービスのあり方を提示したことで、図書選択の方向は「要求論」に大きく方向転換する。この理論で最も重要視されるのは「利用者の要求する本を提供する」ことである。図書選択にあたっては、利用者がどのような本を求めているのか(潜在的要求)を正確に知り、要求を予想し、利用者のニーズを掘り起こすような本を選ぶことである。そして選択した本がどの程度利用者を満足させているのかを評価し結果を真摯に受け止める。また利用者からリクエスト(顕在的要求)があれば必ず提供する。リクエストされた本を購入するのか、相互貸借により提供するのかは、その図書館の収集方針と照らし合わせ、予算との兼ね合いや今後の利用が見込めるのかを見極めて判断される。
 
 3.「価値論」と「要求論」の統一
 「要求論」が重要視されるようになった1970年代は「要求論」と「価値論」の対立の図式が強く見られたが、1980年代以降二つの考え方を統一する方向の図書選択論に変化する。利用者の要求を重視して図書選択をすることは、結果として質の高い本の収集につながっていることが明らかとなり、戦前のような国益による価値や、学術的・文学的価値とは異なる「利用者の立場による価値」を評価することに他ならないからである。
 
おわりに
 「価値論」と「要求論」について考えるとき、図書館におけ図書の「価値」とは何かということに行き着く。利用者の知的好奇心や読書欲を刺激しさらなる要求を引き出すような本が「価値のある本」であるなら、この二つの理論をあれこれ論じることは無意味のようにも感じる。利用者と本の出会いの場を提供するのが図書館の役割である以上、図書選択論はその役割を果たすための道具にすぎないのではないか。市民と図書館員が協力しその道具を使いこなしていくことが大事であると考える。
 
以上
 
 
【講評】評価:B
合格ですが、価値論、要求論などの選書理論とその背景なども図書館の歴史のなかで理解を深めましょう。アメリカ(フィクション論争=価値論)と日本(国家の思想統制=価値論)との違いなどもさらに考察してみましょう。また、知的自由(利用者の知る権利)とも関わります。公共図書館では利用者の要求を意識しながら、情報サービスの資源として耐えうる幅広い選書を心がける必要があります。図書館では、利用者の情報要求に応えるとともに、利用者が未知の本と出合う場提供することも大切です。その点で、前川恒雄氏の考える選書事例が参考になります。なお直接選択の特徴や選書会議についても復習して下さい。

 
 
 
 
講評を読むと『あ〜、そういう視点はなかったなあ….』ということがいつも指摘されていて(あたりまえなんですけどね)反省しきりです。
 
もう少し丁寧に教科書や参考書を読まないとダメだわあ。