底の浅い『キャリア教育』について考える

『将来の夢は?』
  
  
子どもに気軽に問いかけがちなこの言葉。
大人が思うよりずっと重荷に感じている子どもは多いのではないでしょうか。
  

小学校低学年ぐらいまでなら、無邪気に『サッカー選手!』『ケーキ屋さん!』『保育士さん!』なんていう返事が返ってきそうですね。
  

ところが、だんだん成長し自分のこと(学力や性格)を客観視できるようになってくるわけで、さらに世の中の複雑さがなんとなくわかってくると、そんな『夢』みたいなことを簡単に口にできなくなってくるのでしょう。
  
我家の下の子はそのあたりのことを数年前から意識するようになったらしく、気軽に聞いて来る大人への返事としては『LEGOクリエイター』と答えているそうです。

  
そのような仕事があることを認識し、LEGOと関わりのある世界にいられたらいいなあという気持ちはあるものの、本物の『公認レゴクリエイター』はちょっと現実離れしているよね、っていうことですね。
  
  
小中学生ならそんなところでしょうが、さすがに高校生ともなればそうはいかなくなってきますよね。

就職か進学か。進学にしても専門学校?4年制大学?と進路選択が切実になってくるわけですが、そこでも学校の進路指導として『将来どういう職業に就くつもりか?』を明確にさせることが重要だということを最近になって強く認識しました。

  
上の子が通う高校は自称『進学校』。
進学校とはいうものの、4年制大学に進学するのは半分ほど(うち国公立は数人)。残りは短大・専門学校・就職という進路構成の学校です。
 
1年生のころから進路指導があるのですが、進級時の理系文系コース選択や進学先の選択にあたり、志望の職業を明確にさせようとする指導にうちの子どもはかなり戸惑っていました。
  
親としては、大学とはどのようなところで一般的にどのような学部学科があるのかをざっくりと説明した上で、自分の興味の湧く分野に進学すれば良いと言い続けてきました。

しかし周りの生徒さん達はみな『栄養士になるから、◯◯大学の△△学科』とか『専門学校にいって犬のトリマー』というような具合に進路を決めているし先生にもそのように求められているというのです。

  
そんな空気の中で『どこの大学受ける?』と聞いても、本人は『やりたいこと(職業)』が決められないから決められないと悩んでいたようでした。
  
大学って自分の興味のある分野を選んで学問するところだよ、学び方を身につけながら4年間かけて自分が進む方向性を模索すればいいんだよ、という親の言葉にはなかなか納得できずに3年生になってしまったのです。
 

ちょっとした転機が訪れたのは、とりあえず参加してみたある大学のオープンキャンパスで、ぼんやりと興味をもっていた学科の教授のお話を聞いたことがきっかけでした。
 
自分の中でモヤモヤと考えていたことが、実は間違いではなかった、むしろ正しかったということに気がつけたようです。
 
私も一緒にその先生のお話を聞いていたのですが『この学科は就職に直結するようなことを期待しないで欲しい。しかしどのような分野で働くようになっても必ず必要とされることを深く掘り下げて勉強します。』というようなことをおっしゃっていたのでした。
 
自分の考えていたことをドンピシャリで肯定してもらえたことで、俄然前向きな気持ちになり、するすると志望先を決定して着々と行動を起こしはじめました。
 
 
それにしても、なぜこのような遠回りをしなくてはならなかったのかと複雑な気持ちはいまだに拭えません。
 

そんな私の目に留まったのがこちらの本でした。若者向けの『キャリア教育論』です。
文科省が推進してきたキャリア教育について、『就きたい職業』にばかり目を向けすぎることへの警鐘をならしています。


 
この本の中で、著者は行き過ぎた『やりたいこと探し』の結果として、少ない経験の中からイメージ(憧れ)先行で底の浅い選択をしてしまう可能性を指摘しています。

また、やりたいこと探しに火をつけることには積極的でも、実現可能性(つまり自分の実力とか適性ですね)の探求や判断を下すことには消極的な指導のあり方が夢負い型のフリーターを増やしているのではないかとも指摘。
 
仕事をするということは、夢と現実の折り合いをどこかでつけながら『やりたいこと』『やるべきこと』『やれること』のバランスをとることであり、これから進路を考える若者には『職業自体ではなく、働いていく自分の軸となる価値観を十分に意識し、一定の方向感覚を身につけることが大事』とアドバイスしています。
 

まったくそのとおりで、私も『夢』だの『将来何になりたい?』という言葉を聞くたびに『ただの夢ならいくらでも言えるけど、実際にどういう仕事していこうかなんてそんな簡単に決められないでしょ〜』と苦々しく思っていました。
 
大人が無責任に、夢を追うことや自己実現のために働くことを美化しすぎることが、就職して1〜2年で『自分のやりたいことでがやらせてもらえない』なんて軽々しく離職してしまう若者を大量生産させているのではないかと危惧しています。

 
就きたい職業に対して『公務員』なんて答えている高校生に対して『公務員は雇用主が国や自治体っていうだけで、仕事の内容は多岐に渡るってことわかってる〜?』とツッコミを入れたくなってしまうのですが、せっかく国を挙げて取り組んでいるキャリア教育なのですから、小学生のうちから社会の仕組みや仕事のあり方などを理解できるような取り組みにして欲しいなあ。