先日返却されてきた『図書館制度・経営論』のレポートの続きです。
そういえば、この設題を選んだのは夏のスクーリング『図書館サービス特論』を受けた影響があったからでした。
授業の課題を考える際に、各地の図書館の運営方針や図書館協議会の議事録に多く触れ、はからずも「図書館の運営」という分野について考えるきっかけになっていたのです。
山口先生の『図書館サービス特論』、意義深い授業だったなあ…と後になってからしみじみと感じています。
第2課題
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【第2設題】
図書館サービスの評価を図書館の運営に効果的に反映するには、どのような事項に注意すべきか述べなさい。
【はじめに】
図書館サービスが効果的・効率的に運用されているかを検証することは、その後の経営計画を策定する上で重要なステップである。得られた評価をその後の運営に効果的に反映するために留意すべき事項を検討した。
【本文】
1.目標の設定
図書館ハンドブックにもあるように、運営計画を立てる段階において達成するべき目標を掲げその館が目指すサービスの姿を明確にすることが重要である。法的根拠でもある「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」を大きな指針としながら各自治体の実情にあった運営目標を策定し、達成への道筋を具体的に計画する。
2.指標の設定
1.で策定した目標を「絵に描いた餅」としないためには、どのような観点でどのような指標を用いて評価するかの設計も重要である。豊中市立図書館の運営提言に示された評価方法を例にとると、項目が大・中・小と段階的に細分化され日々の具体的行動に落とし込み易くなっている。これは結果を翌年度の改善に反映するには大変有効だと感じた。また利用者目線に立った評価のためには、入館者数や貸出しなどの定量的な数値だけでなく記述式アンケートを用いた利用者満足度調査のような定性的な評価も必要と考える。
3.誰が評価するのか
図書館現場による自己評価は、自ら設定した目標をどの程度達成したのかや改善すべき点を職員自身が自覚するには有効である一方、達成できなかった理由に目が向きがちであり客観的な評価に繋がりにくいのではないか。利用者目線での評価、新しい発想での改善を求めるには図書館協議会や第三者委員会のような外部評価を取り入れることも不可欠である。
4.評価結果の公表
図書館設置の目的が市民サービスであり、その向上のための評価であるから調査結果を市民に広く公表することは図書館の責務である。自治体広報誌、ホームページ、SNSなど市民の目に触れやすいメディアに評価結果と改善の取り組みを公表することは図書館の存在意義を積極的に市民に伝えることにも繋がり、市民とともに課題解決に取り組む姿勢を示すことにも有効である。
5.評価結果の活用
2.とも関連するが、統計や指標数値を扱う際に似たような規模(人口、年齢構成、都市化の程度など)の図書館と比較することが、結果を活用するにあたって効果的であると考える。資料費や貸出し回転率などの数値を同規模図書館と比較したデータは、議会への要求や市民への理解を求める際にも重要な指標となる。また同規模他館の取り組みを参考にすることで、新たな視点での業務改善や新規事業に取り組む等職員の意欲向上にも繋がる。
評価結果を次年度以降の計画に反映するにあたり、今後どのように改善していくかを具体策を記載する必要がある。その際現場の業務に過度な負担となり職員のモチベーションを低下させることがないよう、取り組むべきことの優先順位を明確にすることも大切である。
【おわりに】
図書館の経営評価は長期にわたる住民へのサービス向上が目的である。今回公共図書館の評価事例に触れる中で、自治体首長や図書館職員の交替に左右されない大きな目標と長期計画をしっかりと持つこととその実現のために具体的な項目と指標を設定する大切さを認識した。また評価とその活用にあたっては、数値による効率のみに縛られた「評価のための評価」に陥いることのないよう常に意識するべきであると感じた。
以上
【講評】評価:A
要点を把握しまとめたレポートとなっています。計画には長期計画と短期計画がありますが、このバランスを常に考え、環境に応じることも大切ながら、図書館の歩む道を見失うことのないよう運営することも留意事項といえましょう。
(講評に興味のある方は、【講評】の下の数行をマウスでドラッグしてハイライトさせて下さい。)
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