昨日の続きで『図書館サービス概論』のレポート公開、第2設題です。
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【第2課題】 図書館は、多文化サービスとして、どのような活動をすべきか述べなさい。
【はじめに】
異なる文化的背景を持つ人々が共に暮らす社会のあり方として、ひとつにはグローバル化という言葉で表される国境や民族を越えた画一的でフラットな社会がある。一方、異なる言語や文化を互いに尊重し共生する「多文化社会」という考え方がある。後者の立場から、図書館行うべき多文化サービスについて考えたい。
【本文】
日本では、単一言語・単一民族国家を前提とした社会が成り立ってきた。しかし実際には、在日韓国・朝鮮人や日系ブラジル人をはじめとする外国からの移住者とその子孫、日本の先住民族であるアイヌなど独自の言語・文化を持つ人々が居住している。近年、このような民族的・言語的マイノリティの知る権利の保障について認識し、正当な利用を妨げない環境づくりの重要性に目が向けられるようになった。図書館が果たす役割としての多文化サービスを以下の3点に分けて考えた。
1)ソフト・ハード両面での受け入れ態勢について
ソフト面で最も重要な点は職員の意識である。異なる文化を持ち日本語以外の言語を母語とする利用者を特別視することなく、普段通りに利用者が求めるものを知り最良のサービスを提供しようとする態度が大事なのではないか。このような意識が資料収集や集会・広報活動を行う際に判断の拠り所となるはずである。一方ハード面では、館内サイン表示の工夫と利用案内・掲示物の多言語化がある。特に館内の案内表示については、誰もがひと目で分かるピクトサインがベストと考える。これは、識字率の低いメキシコの公共施設で目にしたピクト表示が、言葉の分からない旅行者にも大変役立った自身の経験からである。また複数言語での利用案内や掲示物を作る際には、潜在利用者も含め必要とされる言語を十分に把握検討し、地域に住む外国人の協力を仰ぐことが重要と考える。
2)資料の収集について
まず新聞や雑誌などカレントな情報に触れることのできる資料が必要である。その国で広く読まれている雑誌や小説、映画DVDなど、母国では当たり前に手に取れる資料を揃えたい。また、日本の文化習慣や日本社会での暮らしに必要な情報がその国の言葉で書かれた本も必要である。加えて、彼らの文化や歴史をその国の言語と日本語両方で著した資料を揃えることは日本人の異文化理解を深めるためにも役に立つはずである。これらの資料を集めたコーナーは目につきやすい場所に配置し、複数の言葉での案内表示をつける。日本人を含めた利用者全体に多文化共生のメッセージを送ることを意識したい。
3)集会・行事の開催
マイノリティの人々が参加できる行事を開催し、図書館が多様な人々の交流の場であることを積極的にPRする。特にこどもが参加しやすい工作教室やお話会などの行事は、参加したこどもだけでなくその親達にとっても図書館に関心を持つきっかけとなるはずである。その他、通訳付きの図書館ツアーを開き館内や利用方法を彼らの母語で説明することや、外国の絵本をその国の言葉でよみきかせる機会を設けることが考えられる。
【おわりに】
多文化サービスは、乳幼児や障害者に対するサービスの延長である。たとえマジョリティ層の利用者であっても、個々人を見れば多様な生活背景があり身体的・精神的差異を有している。国籍・母語・文化的背景にかかわらず地域に居住する全ての人々が自分の居場所と感じられる図書館にするためには、「違い」を当然のこととして柔軟かつ多角的な視点に立ち、資料収集、広報活動、行事・集会の企画運営にあたることが重要である
以上
【講評】評価:A
多文化サービスへの基本的な考え方とサービスの方法についてよくまとめられています。この上に現状を把握したレポートの内容があるとさらに学習の成果が顕著となる内容と思われます。
(講評に興味のある方は、【講評】の下の数行をマウスでドラッグしてハイライトさせて下さい。)
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