人生初の万年筆は、中学生時代に近所のファンシーショップで買ったセーラーの『キャンディー』。当時はそんな名前もメーカーも全く知らなかったけれど、さんざん迷ったあげくにお小遣いで買った水色の一本。1970年代、万年筆といえば大人の使う高級筆記具。中学校入学のお祝いの定番でメタリックな大人っぽいデザインがほとんどだったと思います。そんなイメージをひっくり返すポップでキュートなデザインの万年筆がキティちゃんやスヌーピーの雑貨と並んでいたのです。あの太くてぽってりとした質感とおもちゃっぽい色、キャップの先についているまるっこい星マークに中学生女子のハートはぎゅーっとわしづかみにされたのでした。
そのキャンディーの復刻版が出ているんですねえ。そうそうこの「クリアブルー」ですよ。昔のおもちゃのようなちょっと安っぽい色、懐かしい~!!ファンシーショップの店内に流れていたゴダイゴの『ガンダーラ』やクリスタルキングの『大都会』のメロディーまで鮮やかに蘇ってきます。セーラーの復刻版の広告には『1976年発売、女子中高生を対象としたカラフル軸の万年筆』とあります。この戦略に素直にのってしまった中学生の私。
しかしながら悲しいことに、万年筆の扱いなんて全く知らない子供ですから、すぐにペン先が乾いて書けなくなってしまい、そのたびにギュウギュウとペン先をノートに押し付けたりしていたんですね。ペン先はますます書きづらくなり、いつの間にか机の引き出しにつっこんだまま放ったらかしになってしまいました。実家にもないから捨てちゃったのかなあ。
それから数年が経ち、次に万年筆を手にしたのは大学生のとき。フールス紙の大学ノートが好きで、いつも鉛筆との組み合わせでノートをとっていたのですが、ふと万年筆で書いてみたくなったのです。学内の生協で売っていたプラチナのデスクペン。500円か700円だったか記憶が定かではないのですが、ブルーブラックインク用に黒軸を、赤インクを用に赤軸を購入。これは今でも手元にありますよ。卒業後ずっと使っていなかったのですっかりペン先が詰まっていましたが、再び使ってみたくなったので、ペン先を水に浸け置きしてみたらあっけなく復活したので結構頻繁に使用しています。キャップがあまりにも安っぽいのが難点ですが、大げさでなくすらっとしたペン先の形も、細くてカリカリした書き心地もとても気に入っています。
そして最近手に入れたのは、パイロットのペン習字ペン。デスクペンのようにすらっとした形のスケルトン。これも大変細いペン先なのでカリカリした書き心地で、5mm方眼のノートに書き込むのに愛用しています。指が収まるように2つのくぼみがついているので、軸が滑ることもなく常に正しい角度で書くことができるのでいいですね。
そしてもう一本、値段につられて買ってしまったプラチナのプレピー。200円というのは本当に驚きです。これならボールペン感覚で気軽に買えるし使えます。自分用にブルー軸を購入しブルーブラックインクを入れて使っています。こちらは太さ0.3と書いてあるのですが、ゲルボールペンの0.4に比べるとずっと太い感じです。さらさらとインクが出てくるので力を入れずささっと書けるため大きく書きたい時やさっとメモをとるときなどに使っています。あまりの安さについ子供達用にと言い訳しながら赤軸も買ってしまいました。下の子が宿題の丸付け用に赤インクを入れて使っているようです。
このプレピーは軸の色と同じ色でペン先に塗装してあるのですが、2年ほど使っているうちに、ぺろっとこの塗装がフィルム状に剥げてしまいました。私はこのステンレスの質感の方がむしろ好きなので別に気になりませんが。
こうして見ると、万年筆が好きな割には安いものしか持っていないんですよね。そろそろ年相応のちょっと素敵なものが欲しいなあ。プラチナのキンギョがとっても気になっているのだけど、なかなか思い切れません。このセルロイドの質感と赤の色合いが何ともいえず素敵なんですよね。プラチナの書き心地も好きだし、いつか買いたいなあ。