5月に書き上げて提出した『情報資源概論』のレポートが返却されてきました。
結果はどちらの課題も『B』ということでかろうじて合格といったところ。
お恥ずかしいですが提出したレポートをそのまま記載してみます。
【第1課題】 選書における代表的な理論について説明しなさい。
はじめに
公共図書館では、各館の収集方針に基づいて図書を収集し蔵書形成を行っている。個々の図書の選択を判断する際の代表的な考え方について以下に述べる。
本文
これまで提示されてきた多くの図書選択論(選書論)は大きく分けて二つの考え方に集約される。一つは図書の「価値」を基準とするもの、もう一つは利用者の要求の高さを基準とするものである。この二つの考え方は論者により「価値論」と「要求論」、「質志向型」と「要求志向型」、「読むべき本を提唱する」と「望みの本を提供する」のように表現されている。いずれの場合においても前者は本の内容・質という意味での「価値」を、後者は利用者の「要求」を重視している点で共通している。
1.価値論について
日本においては、戦前は「価値論」に基づく収集が大きな流れであり、国や図書館の選択した「善良なる本」を収集することを目的としていた。ここでいう「善良なる本」とは国策に有益な思想や主義を国民に植え付けるための図書である。図書館は国民を教化するのに適した図書を選択し読ませるための施設であった。
戦後、図書館法が制定されたると国の政策からは離れた、図書館による自主的な選書が行われるようになったが、基本的には図書館員の判断による「良書」の提供が中心であった。このような図書選択は「読書はこうあるべき」という図書館員の価値観の押し付けになってしまいがちであり、必ずしも利用者の求めるものとは一致しないことも多い。
2.要求論について
1970年代に入り、日本図書館協会による「市民の図書館」が新しい図書館サービスのあり方を提示したことで、図書選択の方向は「要求論」に大きく方向転換する。この理論で最も重要視されるのは「利用者の要求する本を提供する」ことである。図書選択にあたっては、利用者がどのような本を求めているのか(潜在的要求)を正確に知り、要求を予想し、利用者のニーズを掘り起こすような本を選ぶことである。そして選択した本がどの程度利用者を満足させているのかを評価し結果を真摯に受け止める。また利用者からリクエスト(顕在的要求)があれば必ず提供する。リクエストされた本を購入するのか、相互貸借により提供するのかは、その図書館の収集方針と照らし合わせ、予算との兼ね合いや今後の利用が見込めるのかを見極めて判断される。
3.「価値論」と「要求論」の統一
「要求論」が重要視されるようになった1970年代は「要求論」と「価値論」の対立の図式が強く見られたが、1980年代以降二つの考え方を統一する方向の図書選択論に変化する。利用者の要求を重視して図書選択をすることは、結果として質の高い本の収集につながっていることが明らかとなり、戦前のような国益による価値や、学術的・文学的価値とは異なる「利用者の立場による価値」を評価することに他ならないからである。
おわりに
「価値論」と「要求論」について考えるとき、図書館におけ図書の「価値」とは何かということに行き着く。利用者の知的好奇心や読書欲を刺激しさらなる要求を引き出すような本が「価値のある本」であるなら、この二つの理論をあれこれ論じることは無意味のようにも感じる。利用者と本の出会いの場を提供するのが図書館の役割である以上、図書選択論はその役割を果たすための道具にすぎないのではないか。市民と図書館員が協力しその道具を使いこなしていくことが大事であると考える。
以上
【講評】評価:B
合格ですが、価値論、要求論などの選書理論とその背景なども図書館の歴史のなかで理解を深めましょう。アメリカ(フィクション論争=価値論)と日本(国家の思想統制=価値論)との違いなどもさらに考察してみましょう。また、知的自由(利用者の知る権利)とも関わります。公共図書館では利用者の要求を意識しながら、情報サービスの資源として耐えうる幅広い選書を心がける必要があります。図書館では、利用者の情報要求に応えるとともに、利用者が未知の本と出合う場提供することも大切です。その点で、前川恒雄氏の考える選書事例が参考になります。なお直接選択の特徴や選書会議についても復習して下さい。
講評を読むと『あ〜、そういう視点はなかったなあ….』ということがいつも指摘されていて(あたりまえなんですけどね)反省しきりです。
もう少し丁寧に教科書や参考書を読まないとダメだわあ。