このところの感染急拡大で、我が県もマンボウ適用になっちゃいそうな勢い。
また図書館がお休みになる?なんて心配から週末は多めに借りてきたよ。
前から気になっていたこちらが書架にあったので手にとりました。
精神科の閉鎖病棟に入院することへの戸惑いと絶望感。今までは牧師としてスーツを着て慰問に行く側であったというのに..。
そんな気持ちの吐露から始まり、2ヶ月の閉鎖病棟と1ヶ月の開放病棟、計3ヶ月間の入院生活で出会った人々やその生活の様子、また入院中に自分と向き合うつらい経験を通じて得た気付きについてが綴られていきます。
社会から隔絶された状態で、その内側と外側を隔てる透明な壁の存在に打ちのめされたり、50年もの間この壁の内側で生きている患者の存在に気付いたり。そして退院の見込みがあるのかどうかさえわからない10代〜20代の若者との毎日のあれこれ。
これは読み手である私の思い込みの問題なのですが、著者の肩書きにゆえに【牧師】としての何か特別な気付きを期待して読み始めてしまったため、若干肩すかし感ありの読後感。NDC分類が【916】(ルポルタージュ)であるように、あくまでルポルタージュ(体験談)なのでした。
ひとつ特別なことがあるとしたら、彼が『大学院卒で先生と呼ばれる立場」であること。これは彼を救うことになる主治医が発した言葉だそうですが、このような立場の人が治療ベースまで上がってくるのは非常に稀なのだそう。しかも発達障害でもある患者を診察するのは初めてだったとか。
後にこの主治医は「あなたの治療をほぼ諦めかけたことがあったのだ」と本人に伝えます。
彼のような患者さんの治療がなぜ困難なのかやどれほどの熱意をもってこの主治医が治療に取り組んだのか、という視点で書かれた部分が大変興味深くて、このあたりはもっと掘り下げて知りたかったかな。
社会的入院と呼ばれる超長期入院のことや、薬漬けとなってしまう精神科医療の抱える問題、医療者側が疲弊してしまうシステムの悪循環などについては以前に読書メモを書いたこちらの本を読んだ時に知りました。
こちらの本はNDCでいえば『心理療法、カウンセリング』のジャンルである【146.8】。その方面の専門家ならではの感じ方や分析的な視点があり、かなり勉強になった一冊でした。
精神科病院でのコロナ対応の難しさを取り上げたNHKの番組に衝撃を受けたことも昨年のこと。
【新型コロナ】という切り口からの報告ではあるものの、『居るのはつらいよ』とも合わせ精神科医療の構造的な問題について知るきっかけとなりました。
そんなワケでこの方面へのざっくりとした知識は持った状態で読んだので、『牧師〜』の方はちょっと物足りなさがあったのが正直なところ。
とはいっても、著者が【牧師】として感じたこと、得たもの、その後の仕事・生活に関する後日談など、読んでよかったと思わされる部分もたくさんありますし、文章が平易で読みやすくこの問題に触れる入口としてとてもGOODな一冊。
不登校だった高校生時代のことやその後の学歴、牧師となった経緯と現在所属している教会の名前も掲載されており、この著作を実名で出版した勇気にも頭が下がります。
今後のご活躍をお祈りします。
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