池上彰さんの『おとなの教養 〜私たちはどこから来て、どこへ行くのか?〜』を読んでいます。
私にとって池上彰さんといえば、なんといってもNHKの『週間こどもニュース』のお父さんです。
子どもが小さい頃、休日の夕方に放送していたのだったかしら?面白くてよく見ていました。
とはいえ、子どもはまだかなり小さかったので、どちらかといえば大人の方が楽しんで見ていたのですけどね。
ニュースではさらっと通り過ぎてしまうような事件の背景を分かりやすい言葉で説明してくれるので『へ〜、そういうことだったのね』ということが多く、また出演している子どもたちが、あまり語られない『大人の事情』に鋭くツッコミを入れた質問をしてくるのも痛快でした。
池上さんはNHKを退社し現在ではフリージャーナリストとして大活躍されていますが、近頃では東工大のリベラルアーツセンターの教授として学生に『教養』を教えているそうです。
東工大の学生さん、うらやましいです〜!
4年制大学に『教養課程』がなくなったと聞いて驚いたのはつい最近のことなのですが、実は1990年代前半にはそういう流れになっていたのですね。自分が教養課程があった最後の世代だったのだと、この本を読んで始めて知りました。
なぜ教養部が解体されたのか、また、その後東工大に『リベラルアーツセンター』ができて池上さんが招聘された事情などについても触れられています。
本の内容としては「現代の教養とは何か」ということに重点が置かれ、7つの科目に分けてそのエッセンスというか入口的な内容について分かりやすく解説されています。ちょうどご自分が教えている学生さんをイメージしているのでしょう。
日頃ニュースを見聞きしていても、なにかモヤモヤとしてしまうことについて『何についての本を読めばわかるのか』ということを教えてくれるような内容です。
自然科学や医学、薬学、工学など理系分野を専門とする学生にとって、宗教や歴史、哲学というのは『文系科目だから関係ないし〜』どころか、若い頃に十分に知っておかなくてはいけない分野だと思います。
だって世界を破滅に導くことが可能な化学兵器や生物兵器も作れちゃうし、宇宙工学だって原子力工学だって、その力の及ぼす影響力を考えたら、健全でリベラルな思考を持ち合わせていない人にまかせるなんて怖くてできない!
専門分野を極めれば極めるほど、それがどのように世の中で使われていくのかを熟慮する必要が出て来ると思うのです。
逆に文学や経済学など『文系科目』といわれる分野が専門の学生さんには、是非自然科学について学んで欲しいと思います。
政治家やお役人など権力に近い立場に立つ人には、感情や経験だけでなく、数字を冷静に見つめ理論的に物事を考えてもらわないと、これはこれで怖いですからね。
国がトンチンカンな方向に向かわないように、是非とも東大でお役人のレールに乗っている方にはお願いしたいものです。
余談ですが、福島第一原発の事故のときの日本のトップが、原子力工学を専門とする管直人氏だったことにちょっとホッとしたことを覚えています。
結果的には様々な政治の事情だかなんだかで、上手く処理ができなかったのかもしれませんが、自然科学分野を『私は理系が苦手なもので,…』なんて逃げの口実に使うおじさんはちょっと信用できないな〜と思ってしまう私です。
日頃、自分が『ものを知らない』ことを痛感している私にとって、この本のような分かり易い入門書はとてもありがたいです。
他にも池上さんの著書はたくさん出ているようなので、いろいろと読んでみたいところです。子供たちにも是非読んで欲しいのだけれど、親が薦める本を素直に読まないのよね….。