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恵まれた土台を持った人の屈折観


新着図書のYAコーナーに並んでいた本。
表紙の絵に『こどもたちも読む気になるかしら?』と思いながら借りてきました。
  
最初は気がつきませんでしたが、著者はTBSの元女子アナの小島慶子さん。人気ラジオ番組を担当していたというのもこの本を読んで知りました。
  

感受性が豊かで聡明な方なのですね。
理想論だけでない現実的な視点で書かれた中高校生へのメッセージはとても分かりやすく、うちの子供たちにも是非読んでもらいたいなあと思いました。
  
広い視野で様々な角度から物事をみる大切さ、そのために勉強が必要なこと、経済的・精神的に自立するってどういうこと?ということが、ご自身が経験した様々なエピソードをもとに書かれています。
  
人間関係の呪縛から逃れるための心の持ちようなど『そうだよね〜』とうなずきながら読める部分もたくさんありました。
  
未来に向かって悩める若者にはタイトル通り『屈折万歳!』と声をかけたくなる内容です。
  
  
  

ただ、子どもを持つ大人としての感想はもう少し『屈折』したものになってしまいました。
  

この本の中では、育った家庭の人間関係やTBSアナウンサー時代のエピソードなど、華やかな外見からは想像もつかないような屈折を経験したこと、苦しい思いをしながら人生を切り開いてきたことが綴られています。

  
その中には、彼女の生育環境や親御さんとの確執、摂食障害や不安障害で苦しみそれを乗り越えてこられたことにも触れられているのですが(他の著書ではかなりダークな部分まで吐露されているようですね)、そのエピソードを読んでいると『なんだかんだ言っても恵まれて育った人なのね』という感想に行き着いてしまうのです。
  

もちろんご自分での苦悩やその後の努力は大変なものだったと思いますが、現在の彼女の活躍を支えている物事の見方感じ方は、親御さんから受け継いだDNAや与えられた教育環境なくしては育たなかったと思うからです。
  
『社会に出てから自分が狭い世界で育ったことを知った』とありますが、幼い頃に海外での生活を経験していたり、都内のお嬢様学校で名士のご息女と机を並べるなど、庶民には伺い知ることのできないものをたくさん見、また経験して育ったということが、彼女の物事を俯瞰して見る能力(著書の中では知性という言葉で説明されています)を育ててくれたのではないでしょうか。

  
多くの人がもやもやと感じているようなことを、きちんと整理して言語化できる能力やそれをもとに他人とコミュニケーションをとれる力というのは、素晴らしい能力です。
  
この本の中でも上記のような力を身につけることの大切さに触れられていますが、その声が心に響く層というのは一握りの恵まれた子供たちだけではないのかしら…。

  
彼女からのメッセージは素晴らしいし、多くの子どもがこの本に救われるといいなあとは思います。
  
ただ、それを受け止められるだけの土台さえ持っていない子供や若者達が大勢いるのではないかと考えると、なんとなく暗い気分の読後感を持ってしまいました。
  
  
  
天の邪鬼な感想でしょうかね…。