語り口が穏やかで、世の中の複雑なことをわかりやす〜く伝えてくれるフリージャーナリストです。
今読んでいるのは東工大の学生さんへの講義をそのまま収録した『池上彰教授の東工大講義』シリーズの世界篇で、『この社会で戦う君に「智の世界地図」をあげよう』。
15回分の講義が話言葉のまま掲載されているのですが、講義の中での学生さんとのやり取りも入っていて臨場感たっぷり。池上教授の分かりやすい説明と聡明な学生さんとのやりとりを追いかけていると、自分もその場にいて一緒に考えているような気持ちになりワクワクしてきます。
池上さんの講義は、サンデル教授の白熱教室をうんと穏やかにしたような雰囲気。池上さんの若者に対する期待とリスペクトを感じました。
履修希望者が多すぎたために、最も大きな教室に収容可能な260人に抽選で絞ったそうですが、履修出来た学生さんはさぞ刺激的で面白かったことでしょう。
学生さん達の発言を読んでいると皆さん賢くて、宗教や政治経済の国際的な話題にちゃんと鋭く反応しています。
『君が日本の技術者ならサムスンに移籍しますか?』というテーマの実話をもとにした講義では、自分たちの意見をプレゼンテーションさせる練習を兼ねたやり取りになっており、これから社会に出て企業で研究や開発にたずさわっていくであろう多くの若者が自分の考えを真剣に発言している様子が伺えます。
このシリーズの残りの2冊も是非読んでみたいと思います。
もう一冊の池上本は『世界を変えた10冊の本』。
東工大シリーズよりはちょっと難しいのですが、現代の社会情勢を理解するために基本となる古典的な名著を10冊取り上げ、その内容を分かりやすく解説したもの。どのようなポイントがなぜ重要なのかが書かれているところが私のようなセッカチな知りたがり屋にはぴったりな本でした。
『アンネの日記』や『聖書』、『コーラン』、『資本論』。『沈黙の春』などなどタイトルだけなら聞いたことのあるものばかり。
上述の東工大講義もそうですが、一話完結で10話程度のテーマに分かれているというところが読み易さのポイントかも。興味を惹かれたテーマから順不同につまみ食いできるので、気軽に手にとって短時間で切り上げられますからね。
資本論なんて難しくて読む気にはちょっとなれないですけど、機会があったら手にとるくらいしてみようかな….、という気にさせます。
若い頃に読んだことがあるものも、何十年もたって読み直してみたら新たな発見があるかもしれません。社会のあれやこれやを経験したからこそ気が付くことや理解出来ることもあるに違いないと思います。