またまた辞書ネタ本を手にとってしまいました。著者は『三省堂国語辞典』(略して『三国』)の編集委員。
当然『三省堂国語辞典』のPRが多いのですが、どのような方針でこの辞書を編集しているのかということが中心に書かれています。
Amazonではあまり良いレビューは見られなかったのですが、どうもこのレビュアーたちには著者の意図が伝わっていないのかなあと感じました。星1個のレビューでは『◯◯という使い方を容認するのはおかしい』『国語辞典なのだから、間違っているものは間違っていると書くべきだ』というタイプの意見が目立ちます。
本の中で、著者は何度も『言葉の正誤』ということについて触れているし、『三国』は現代語がどのように使われているかを映し出す辞書という方針で作っていると書いているのですけどね。
たとえば『全然』という言葉の後ろが否定形でない使い方や『ら』ぬき言葉のように、世間では広く使われていても自分では使わないなあと違和感を覚える言葉はたくさんあります。
そのような言葉について、『三国』では世の中で広まっているというような書き方をしているそうです。公式の場面や書き言葉としては不適切、とかこの使い方は俗語であるというように、正しいか間違いかではなく、それぞれの言葉や使い方が現代社会の中でどのような位置にあるのかを示してくれる辞書だというのです。
なるほど、言葉の指示書としてこのような辞書に必要性は高いと感じます。テレビを見ていてもバラエティ番組ではOKでもニュースでコレはないでしょう〜、ということがあるし、新聞と雑誌、それもビジネス紙とファッション紙でも容認できる言葉遣いは異なっていますから。そのような時に『三国』をひけば、細かいことには目くじらを立てず聞いていられるし、自分が使う時のガイドにもなります。
この本を読んで『三国』なんて使うもんか!と思った、という意見も目にしましたが、私は逆に茶の間に一冊置いてみたい気持ちになりました。