久々にイッキ読みの小説でした。
ピカソの『ゲルニカ』を軸に現代と過去が交互に描かれ、どんどん混ざり合い最後には衝撃的に繋がります。
史実とフィクションが巧みに混ざり合いすごく不思議な感覚。
読み終わってから調べてみたところ、『ゲルニカ』が制作された時代や制作過程、戦後長いことニューヨーク近代美術館(MoMA)に保管されていたことなど、絵画そのもののヒストリーは事実に基づいているようです。
そしてこの小説の始まりである重要な場面なのですが
「2003年にアメリカがイラク空爆に踏み切るという会見を時の国務長官が国連安保理会議場ロビーで行った際、背景にあるはずのゲルニカのタペストリーに暗幕が掛けられていた」
というのが史実であったことが衝撃的でした。
作者の原田マハさんは、後にそのタペストリーをスイスの美術館で見たそうです。
暗幕が書けられたタペストリーの前で会見する国務長官の写真と「ピカソの真のメッセージは暗幕などでは決して隠せない。誰かがピカソのメッセージに暗幕を掛けたのであれば、私がそれを引きはがすまでだ」というメッセーが添えられて。
この小説に関して、原田マハさんへのインタビュー記事がこちらに掲載されています。
この文章を書いているタイミングで、広島の平和記念式典が始まりました。
1937年に空爆を受けたスペインのゲルニカと1945年に原子爆弾を投下された広島が重なって目に映るような気がします。