小学館が主催する「12歳の文学賞」史上初3年連続大賞受賞という鈴木るりかさんの作品。
小学館のサイトから無料で読めるこちら。書き下ろしの最終章を読んだ印象です。
中学生が書いたというのもびっくりですが、それを差し引いてもいい小説でした。
登場するのは小学6年生のこどもたちとその親や兄弟。
主人公の信也君の視点で描かれるのですが、クラスメイトの田中さんとそのお母さんがとってもいいの。
ほんのちょっとだけ登場するクラスメイトの女の子達や信也君のお兄さんお姉さん伯母さん、登場人物それぞれがくっきりと描かれているのも秀逸。
切なくなったりあったかい気持ちになったり、絶望的になったりほっとしたり。
私は同じような年頃の子どもを持つ親としての視点で読んでしまいましたね、やっぱり。
私の立場に一番近いのは信也君のお母さん。ここまで極端ではないにしろ『自分もこうなってしまっていないか?』とちょっとぞっとしちゃいました。
田中さんのお母さんは、信也君のお母さんとは正反対の立ち位置。
若干14の才の作者が両極端の2人の大人をここまで暖かい視線で描けるということに驚愕です。
ただ、最後の2ページだけ急にポエム感が強くなってしまたのがちょっと残念。
抑えた文章で淡々と進んできたのに、最後の最後で作者の『中学生女子』臭が出てしまったのは油断したかな?。
今なら、こちらから全文が無料で読めます。
『さよなら、田中さん』
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