こちらのマハさんが好きなの。【読書メモ】
またまた原田マハ。ちょっとしつこい?
こちらは期待通りで一気に読んでしまったわ。
舞台は明治時代初頭のパリ。ジャポニズム旋風を牽引する2人の日本人画商とゴッホ兄弟の物語。
例によって史実とフィクションが巧みに入り交じった小説で、巻末に膨大な参考資料が掲載されていることからもマハさんが当時の美術界について深く研究したことがわかります。
ゴッホ兄弟がやり取りした多くの書簡をもとに彼らの心の動きを細やかに描写してあるのですが、時には傷つけあいながらもお互いを自分以上に大切に思い合う様子が本当に切ないの。
また、パリの社交界を相手に果敢に商売を広げる林忠正という人物がカッコイイ!!
林は実在の人物ではありますが、その描き方はマハさん流の味付けでたっぷり膨らませてあります。
裏表紙に使われている歌川広重の版画がゴッホにとって重要な意味を持っていることや、表紙に使われているゴッホの絵が彼の人生でどのような位置づけなのかは読み進めるうちにわかってきます。
ミステリー的な味付けはありませんが、特に物語の後半になって『ああ、そういうことだったのか…』と多くのことに気づかされるのも楽しい。
アートの世界をテーマにした原田マハさんの小説は、美術に疎い私にとって新たな世界への扉を開いてくれる素敵な小説です。
この小説を書くための構想ノート的な本も出ているようなので、さっそくこちらも読んでみるつもり。
小説を読むうちに、ゴッホ兄弟をテーマにしたいせひでこさんの絵本があるのを思い出しました。
絵本だけを読んでいたときは今ひとつ理解できなかったこの作品。
ゴッホ兄弟の人生を知ったあとで改めて読み返してみると、いせひでこさんの静謐な絵と相まって天才画家とそれ支える弟の切ない関わりが切々と伝わってくるのでした。
大人向けの絵本だね。